2022年03月04日 1713号

【読書室/賃金破壊 労働運動を「犯罪」にする国/竹信三恵子著 旬報社 1500円(税込1650円)/権利の主張が罪にされる】

 副題は「労働運動を『犯罪』にする国」である。ここでいう労働運動とは「全日本建設運輸連帯労働組合関西生コン支部」の活動を指す。憲法で保障された労働基本権を遵守する労働運動がなぜ「犯罪」にされなければならなかったのか。著者はこの問題を掘り下げる。浮かび上がるのは、問題が同支部に限らず労働運動全体に及ぶことであり、労働運動を圧殺しようとする攻撃の実態である。

 ストや労使交渉、会社への抗議行動は労働運動の基本である。これらの行動が暴力とされたら労働運動は成り立たない。団体交渉を強要、ストライキを威力業務妨害、コンプライアンス活動や工場占拠闘争などを恐喝と言い換えられると、暴力団対策と同じことになってしまう。関生支部にはこれが適用された。

 警察と検察は関生支部を暴力団と同じように扱い、活動を徹底して封じ込めようとしている。それは、各組合員の生活さえ破壊するものだ。背景には財界の意向が潜んでいる。警察と検察の所業が悪らつであることを知っているメディアも問題を指摘しない。

 関生支部の当然の労働運動を権力と財界が敵視するのは、関西生コン支部が日本では珍しいものの国際基準となっている産業別組合であることにも起因する。

 著者は、「女性の働きにくさ、生きづらさ」を軸に労働運動と向き合ってきた。「関生支部が人一倍ジェンダーに敏感な労組とは思えない」。だが、どの会社か、正規か非正規かを越えて労働条件を保障させる産業別組合の闘いによって、「シングルマザーが自立できる職場」が切り開かれた。本書には、そうした視点も貫かれている。   (I)
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