2022年03月11日 1714号

【MDS18の政策―第6回教育 誰にでも教育の機会を保障(5)/差別は許さない 完全無償化を】

全く不十分な無償化

 日本の教育無償化の現状はどうか。

 義務教育である小学校と中学校(前期中等教育)は、確かに授業料と教科書は無償だ。だが、給食費や教材費・修学旅行・遠足などの実費負担がある。低所得階層に対し「就学援助」があるものの、学校教育の一環として行われるものはすべて無償とすべきだ。

 高等学校(後期中等教育)については、2011年度から「高等学校等就学支援金」(授業料実質無償化)が実施された。国公立高校では、国が生徒に代わって授業料を全額負担する。授業料が高い私立についても、一部を国が負担する。しかし支援対象は義務教育同様授業料のみであり、入学料は支給されない。また、PTA会費、施設整備費、後援会費、同窓会費など様々な名目で支払いが強要されている「諸費」への支援は低所得層(市民税所得割非課税世帯・生活保護世帯)に限られている。

 高等教育では、学費の支援制度が創設されているが、無償化には程遠い金額であり、ごく限られた人数分しか予算が組まれていない。多くの学生が教育ローンである貸与制の「奨学金」を利用せざるをえない。

 日本政府の政策がきわめて貧弱なのは、教育を基本的人権としてではなく、貧困・経済対策としてしか捉えていないからだ。

民族学校を差別

 高等学校就学支援金には別の問題がある。2010年、民主党政権下で制定された同制度は第1次安倍政権の下で世帯の所得制限が導入され、朝鮮高級学校は支給対象から排除された。

 世帯の所得制限導入は世帯年収がおおむね910万円以上は支援金を支給しないというものだ。そこには「子育て・教育は第一義的には家庭に責任がある」との価値観が表れている。所得制限を超える家庭の親が義務教育後の高等学校授業料を負担するとは限らない。子育て支援ではなく、子どもの人権と捉え所得制限は撤廃すべきだ。

 制度創設時は、朝鮮高級学校も支給対象だった。だが、安倍政権は「拉致問題」などを口実に支給対象から外した。橋下徹大阪府知事(当時)も同様に政治的問題を持ち出し、支給対象から外すばかりか、私学助成金支給も打ち切った。そして、支給対象とすることの条件として「日本の学習指導要領に基づく教育課程の実施」などを突きつけた。これらは、教育に政治を持ち込み、また、権力が不当に介入するもので、国際人権規約に反する。人権概念の拡張の歴史を踏みにじっている。  (続く)
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