2022年03月11日 1714号

【時代はいま社会主義へ(第16回) 反ファシズム統一戦線(1)―ファシズムとは金融資本のテロ独裁】

 今回は、コミンテルン第7回大会のディミトロフ報告で打ち出された反ファシズム統一戦線の問題を取り上げる。

 コミンテルンとは1919年にレーニンによって創設された共産主義者の国際組織のことである。1943年の解散までに7回の大会が開催されたが、ディミトロフ報告はその最後の大会となった1935年の第7回大会で行われた。この大会のテーマは、1933年1月にドイツでヒトラーが政権を獲得し、戦争の危機がさし迫る中で、各国におけるファシズムの台頭を阻止するための反ファシズム統一戦線をいかに作り上げるのか、そのための戦略、戦術をいかに練り上げるのかということであった。

 ディミトロフ報告では、まずはファシズムの階級的性格が正しく定義づけられた。「権力を握ったファシズムは、金融資本の最も反動的、最も排外主義的、最も帝国主義的な分子の公然たるテロ独裁である」。ここでいう「金融資本」とは独占的な産業資本と独占的な銀行資本が融合または癒着して生み出された資本のことである。そこで、もしもこうしたディミトロフ報告を踏まえてファシズムをより簡潔に定義するとすれば、ファシズムとは「金融資本のテロ(暴力的)独裁である」ということができるだろう。そしてこのように定義することによって、ディミトロフ報告はファシズムを「反乱をおこして国家機構を掌握した小ブルジョアジーの権力」などという当時一部で流布していたファシズムについての俗論をきっぱり拒否したのである。また、こうしたファシズムの定義は「ファシズムとは全体主義の政治体制のことである」という、今日の日本でも広く言われているファシズム論の検討にも役立つ。たとえば、『大辞林』(辞典)はファシズムについて「第一次大戦後に現れた全体主義的、排外主義的政治理念、またその政治体制」と書いている。このようにファシズムといえば「全体主義」という説明が一般的であるが、しかしこうした説明は不十分である。なぜなら、これでは誰がこの体制を推進し、誰がこの体制から一番の利益を得たのかという肝心な点が抜け落ちてしまうからである。

 ファシズムの定義と関連してディミトロフ報告がいま一つ力を込めたのは、ファシズムが「金融資本のテロ独裁」であるとすると、ファシズムによる権力の掌握を通常のブルジョア政府の政権交代と同一視してはならないという主張であった。「ファシズムの権力掌握は、一つのブルジョア政府と別のブルジョア政府との普通の交代ではなく、ブルジョアジーの階級支配の一つの国家形態であるブルジョア民主主義と、そのいま一つの国家形態であるテロ独裁との入れかわりである。この区別を無視するのは重大な誤りである」。ブルジョア民主主義もファシズムもブルジョアが支配する国家だという理由から両者の違いを見ようとしない見解を批判したディミトロフ報告は、まさにそうした理由からファシズムに対する闘いの重要性を強調し、反ファシズム統一戦線の必要性と緊急性を呼びかけたのである。 《続く》
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