2022年03月18日 1715号

【ウクライナ戦争に日本も防弾チョッキ/戦闘を泥沼化する軍事援助をやめよ/停戦合意にこそ全力を】

戦争をあおるな

 ロシア軍事侵攻から2週間。ロシアとウクライナの政府間で停戦協議が行われているが、合意にいたらず主要都市で戦闘が続いている。双方の兵士の他、市民474人が死亡、861人が負傷した(3/8国連人権高等弁務官事務所発表)。

 ロシアを非難する親米諸国はウクライナ政府に戦費の援助とともに兵器の供与を行った。

 「支援」は、米国3・5億ドル(約400億円)やEU4・5億ユーロ(約580億円)。さらに「紛争地には殺傷兵器は送らない」方針だったドイツが対戦車ミサイル1000基、地対空ミサイル500基を供与すると発表(2/26)。NATO(北大西洋条約機構)未加盟国で、中立的立場を守ってきたスウェーデン(2/27)、フィンランド(2/28)までが兵器の提供を決めた。しかしこの「支援」は戦闘を泥沼化し、戦争犠牲者を拡大するだけだ。

市民を犠牲に

 提供される兵器は主に対戦車ミサイル「ジャベリン」や対空ミサイル「スティンガー」。携帯式で、2、3人で使いこなせるという。

 この兵器は誰が使うのか。政府軍と言うよりボランティア兵だ。ウクライナ政府は2月24日、戒厳令を出し、18歳から60歳までの男性の出国を禁じた。さらに入隊の年齢制限をなくし、60歳以上でも可能とした。つまり、「祖国防衛のために」武器をとれと言うのだ。

 ウクライナ保安局がナショナリスト・グループを軍に配置し、「市民を盾」に市街戦を仕掛けているとの報道もある(2/25SPUTNIK)。ビルの一室からミサイルを撃ち、ロシア軍の反撃を受ければ市民の犠牲を宣伝する。アフガニスタンやイラクなどでテロ集団がとった手口だ。

 真偽は定かではないが、「徹底抗戦」を後押しする武器供与国政府はウクライナで起きる惨状には一切責任を持たないのは確かだ。

 日本政府も自衛隊の防弾チョッキをウクライナに送ると決めた(3/4)。ウクライナは「紛争当事国」ではないから「防衛装備移転三原則」(2014年)に抵触しないと強弁する。これが「武器」を「防衛装備」に言換え、軍需産業に市場を提供するために見直した「三原則」の実態だ。燃える炎を消すのではなく、さらに油を注ごうと言うのだ。

戦争を商売に

 戦争で利益を得るものはただ一人、軍需産業だけだ。「ジャベリン」は米ロッキード・マーティン社などが開発した。ミサイル1発4万ドル(ウィキペディア)。「スティンガー」は米ジェネラル・ダイナミック社。1ユニット3・8万ドルだ。誰が発射ボタンを押そうがミサイルは消費され、着弾地では破壊と殺戮が起こる。

 彼らの商売に敵も味方もない。21年10月、ウクライナ政府軍が停戦合意に反して、東部の親露派ドネツク人民共和国を空爆した時、使用したのはトルコから購入したドローン爆撃機だった。トルコはNATO加盟国でウクライナとの関係を強めているが、ロシア製の地対空ミサイルを購入するなど「極めて近いパートナー」(ラブロフ露外相)関係にある。

 ソ連時代に軍需産業が育ったウクライナから中国は「ロシア製」兵器を手に入れ、コピー兵器を安くつくり、ロシア軍需産業の市場を奪っている。対米協調の中露はここでは商売敵だ。

 軍需産業は儲かればいい。軍隊は「力」を誇示する必要がある。この産軍複合体は国際紛争が軍事衝突に向かうことを願っているのだ。

核の脅威をなくせ

 究極の殺りく兵器、核兵器さえ戦争の「抑止力」だと正当化する産軍複合体。だが、その「抑止力」は最悪の脅迫手段として突き付けられた。最多核保有国ロシア。プーチン大統領は「(軍事作戦を)邪魔する者は誰であれ、歴史上、類を見ないほどの大きな結果に直面する」(2/24)と核使用をにおわせ、その3日後に核部隊に「高度な警戒態勢に入る」よう命じた。

 まったく理解しがたい脅迫行為なのだが、脅威は核兵器だけはなかった。ウクライナ南東部、欧州最大規模のザポリージャ原発で戦闘があった(3/4)。原子炉の冷却ができなくなれば福島原発同様の事故が起きる。

 ロシア軍は36年前に事故を起こしたチェルノブイリ原発も制圧。いまだに放射線を放出し、立入禁止区域が設定されている危険な状態にある。1日たりとも管理を怠ることはできない。存在そのものが危険である原発。戦時下でますますその危険性が際立った。

 この点からも、一刻も早く戦闘を止めなければならない。日本国憲法に「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないよう」決意するとある。戦争は政府の行為である。ロシアもウクライナも世界のどの国においても、戦争を選択する誤った政府を糾弾しなければならない。

 民族や言語、宗教などの違いは本来、多様性や豊かさを意味する。戦争屋はこれを「憎悪」と「分断」に変える。世界の民衆は連帯し、軍需産業を解体させ、好戦勢力を追放する時だ。

 
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