2022年03月18日 1715号

【みるよむ (612)2022年3月5日配信 イラク平和テレビ局in Japan 破壊 略奪される遺跡 イラクの歴史遺産を守ろう】

 イラクでは長い戦乱と社会の混乱で、貴重な遺跡や歴史遺物が破壊や盗難の被害を受けてきた。2021年12月、サナテレビはこの深刻な問題を取り上げた。

 イラクは、シュメール文明やバビロニア文明など人類の最も古い文明の歴史を持つ。数千年前の遺跡が1万5千か所も残っている。

 ところが2003年の米軍侵攻と占領以後、貴重な歴史遺産の破壊や盗難が続いているにもかかわらず、政府は何らそれらを守る措置をとっていない。

 サナテレビのレポーターは「膨大な数の遺跡に配置されているのは、装備も貧弱な、わずか4千人の警備員」と言う。これではとてもまともな管理はできない。首都にあるバグダッド博物館からは1万5千点もの古代遺物が失われている。

 とりわけISIS(いわゆる「イスラム国」)による破壊は深刻だ。イラク北部のニムルド遺跡やハトラ遺跡は、2015年にISISが地上に残った遺跡物をほぼすべて破壊したと伝えられている。

 宗派の私兵も、遺跡の貴重な歴史遺物を略奪している。遺跡とその建物を軍隊の兵舎にする連中すらいる。新たに見つかった3253の遺跡のうち、国に守られているのは11遺跡にすぎないという状態だ。

破壊を容認した政府

 また、有名なバビロンの遺跡に、ホテルやレストラン、輸送など旅行者が訪れるためのインフラもないという。サナテレビは「歴史遺産や史跡を守ることは、その国の国民性を守ることの一部であり、加えてイラクの観光を活性化する」と指摘する。

 米軍やISIS、他のイスラム政治勢力などが、歴史遺物の略奪と破壊を続け、歴代のイラク政府はそれを容認してきた。サナテレビは、戦争や軍事対立、そして利権争いを一掃する中で、イラクの歴史遺産を守ろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

 
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