2022年03月18日 1715号

【未来への責任(343) 3・1独立運動の精神を継ぐ】

 1919年3月1日、日本の植民地支配下にあった朝鮮全土で巻き起こった独立運動。いわゆる「3・1独立運動」から103年の3月1日、東京高等裁判所でノー!ハプサ(合祀)第2次訴訟控訴審第3回口頭弁論が行われた。

 前回裁判で再三にわたり原告側が被告側に対し、事実認否を求める中、一向に指揮権を発揮しようとしない裁判所。打ち切りの危機感が漂う中での裁判だったが、次回裁判で朝鮮人戦時動員の研究者である樋口雄一さんの証人尋問が決まり、韓国の原告らの後押しを受けて何とか一歩前進することができた。

 今、ロシア軍のウクライナ侵略に対して、世界で反対の声が広がっている。私たちはこの事態を遠いヨーロッパで起こったことと考えることはできない。朝鮮半島は未だ南北分断状態であり、アジアは多くの領土問題を抱えている。何よりも日本が独立国であった朝鮮に軍隊を派遣し、外交権を奪い、皇帝を退位させ、植民地化に進んでいった歴史を忘れてはならない。日本政府はロシアを「国際法違反」と批判しているが、かつて日本も同じことをしていたのだ。

 植民地支配下で日本軍人軍属として強制動員され戦地で亡くなった韓国人を、戦後になって「天皇のために死んだ」として日本政府をあげて靖国神社に合祀(ごうし)した。日韓併合以前から抵抗する朝鮮の人々を日本軍は殺戮(さつりく)し、その戦争で亡くなった日本軍人や警察官も靖国神社には合祀されている。原告らのお父さんは加害者である日本軍人、警察官と一緒に靖国神社の「神」として祀(まつ)られている。戦後日本社会が植民地支配に何の反省もしていないことが分かる。

 今年の3月3日は全国水平社結成から100周年だ。「3・1独立運動」は日本の被差別部落民衆の闘いにも大きな影響を与えたと言われている。「人の世に熱あれ、人間に光あれ」の結成宣言のスローガンは今でも色あせていない。植民地支配からの解放を求める闘い、そしてその責任を問い清算を求めることは、決して外交問題に矮小(わいしょう)化されるものではない。人間自身の解放を求める闘いだ。今日の外国人労働者の無権利状態が強制労働問題に無反省の日本社会が生み出したものであることは明らかだ。

 私たちは今後とも戦後補償問題を今の日本社会のあり方を問う闘いとして継続し、解決を実現していきたい。それが、「3・1独立運動」の精神を現在に引き継ぐことだと思う。

(日鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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