2022年03月18日 1715号

【避難者訴訟で東電の賠償責任確定 最高裁 3・11に住まいの権利裁判 提訴】

 福島原発事故から11年。3月2日、避難住民らが国と東京電力に損害賠償を求めた集団訴訟の先行3裁判について、最高裁は東電の上告申し立てを不受理とし、東電の損害賠償責任については高裁判決が確定した。

 東電は、額は原子力損害賠償紛争審査会の中間指針基準で十分、賠償金を払いすぎとまで公言していたが、中間指針を上回る3裁判の賠償額が支払われることで、中間指針を超える賠償基準の必要性が認められる形となった。続く全国の集団訴訟にも有利な判例となる。個々人の額では納得できないケースも残るが、3裁判の一つ「生業(なりわい)裁判」では仙台高裁から区域ごとの一律賠償の上乗せが示されており、損害が原告らにとどまらず被害者全体につながる賠償基準改訂に道を開く。

 今後、焦点である国の過失責任については、4月に開く弁論を経て夏にも判決となり、引き続き最高裁を包囲する運動が問われる。

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 3月11日、国家公務員住宅に住む区域外避難者11人が福島県を相手取り、1人100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴する。

 福島県は、避難者に対し3度にわたる明け渡し通告、家賃2倍相当の損害賠償請求、福島の実家訪問と圧力を加え経済的精神的に追い込んできた。事の発端となった2017年3月の住宅無償提供打ち切り自体の違法性を訴える。「原発事故子ども被災者支援法」や「国内避難民指導原則」など「国際人権法」に照らして違法性を争点とする。

 当日は、「原発事故避難者住まいの権利裁判を支援する会」(世話人代表―武藤類子さんら5人、事務局長―瀬戸大作さん)の呼びかけで、午後3時から衆院第一議員会館で提訴報告集会が行われる。原告らは「公営住宅に応募できない、非正規の仕事にしか就けなく収入が低いのは自己責任なのでしょうか」「もう独立した成人なのに、福島の実家を突然訪ねて高齢の親族に退去を迫ることで家庭内に不和が生じた辛さが分かりますか」と訴えている。
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