2022年03月25日 1716号

【プーチン大統領に停戦圧力/ロシア国内であがる戦争反対=z

支持基盤から批判の声

 ウクライナでの戦闘を一刻も早く停止させるには、世界の好戦勢力を孤立化させることだ。全世界の民衆が戦争をあおる自国政府に対し、抗議の声をあげる必要がある。

 何よりも、ロシア国内での行動が停戦実現に大きな力となることは間違いない。いまウラジーミル・プーチン大統領の支持勢力の中からさえ、批判の声が上がり始めているからだ。

 プーチンの古巣KGB(国家保安委員会)の後継機関であるFSB(連邦保安庁)から内部告発ともいえる情報が伝えられた(3/7英紙 THE TIMES)。ネットにアップされたレポートは、キエフ制圧「電撃作戦」は「失敗した」、経済制裁への準備も不十分、ロシアの国内経済は「6月には空っぽになる」などとプーチンを批判するものだった。

 他にも、軍関係から「戦争反対」の声が上がっていた。退役将校でつくる全ロシア将校協会(OOS)が「大統領と市民へ」とする公開書簡を出している(1/31同会議ウェブサイト)。NATO(北大西洋条約機構)からの脅威は差し迫っておらず、軍事侵攻は「国民から奪った富と権力を守るため」と批判し、大統領の辞任まで求めている。

 財界からも批判があがる。ロシア第2の石油大手ルクオイルは、軍事侵攻の非難声明をウェブサイトにアップした(3/4毎日)。「武力紛争の迅速な停止を求め、外交手段を通じた交渉による解決を全面的に支持する」。ロシア金融4位のアルファバンク会長や新興財閥ロシア・アルミニウム「ルサル」社長などの資本家さえ、戦争反対の姿勢を示している(CNN3/4)。

抗議行動の中心は若者

 軍関係や新興財閥らが異例の政権批判をする背景には、ロシア各地で取り組まれている反戦行動がある。3月6日の日曜日には60都市以上で抗議行動が行われた(BBC3/7)。ロシアの人権メディア「OVD-info」によれば、その日だけで4600人以上が拘束された。侵攻開始から3月11日までに反戦デモ参加を理由に拘束されたのは13000人にのぼる。街頭にはその何倍もの人びとが出ているのだ。

 プーチンはメディアを統制し、高い支持率を維持してきた。だが、さらに強い統制をせざるを得なくなった。当局が「虚偽」報道と判断したメディアに対し、最大15年の禁錮刑を科すことができる法案を成立させた(3/4)。国内だけでなく、海外メディアも対象となる。すでに米国ABCやCNN、英BBCなど主要メディアは取材活動の一時停止を決めた。

 欧米の報道が真実を伝えているとは必ずしも言えないが、若者たちはネットなどから情報を得ているのだろう。街頭行動の中心は従来の年配インテリ層ではなく若い世代に移っているという(3/7米国社会主義誌JACOBIN)。プーチン政権の批判勢力として、ロシア共産党の一部活動家やロシア社会主義運動などのメンバーが左翼反戦連合を組織した。

 プーチンの支持基盤を掘り崩すロシア反戦運動への連帯が、停戦実現をより早めるに違いない。
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