2022年03月25日 1716号

【国家警察を復活させる警察法改悪案 サイバー対応を口実に全市民監視 ただちに反対の声上げ行動を】

 サイバー(インターネットその他のデジタルネットワーク)警察局・特別捜査隊を新設する警察法「改正」法案は3月2日、たった3時間半の審議で衆院内閣委員会可決、3日の本会議で衆院を通過した。現在参院審議中で、早期成立が狙われている。

 この法案は、「サイバー攻撃への対応」を口実に国家警察の復活と市民監視を強めるものであり、廃案にしなければならない。

戦後警察のあり方大転換

 同法案は1月28日に閣議決定され国会に提出された。

 内容は、▽国家公安委員会の任務・所掌事務として「重大サイバー事案」を規定し犯罪捜査を認める▽国の機関である警察庁の内部部局として「サイバー警察局」を新設する▽そこに生活安全局や警備局などサイバー犯罪部門を集約するとともに、全国を管轄し捜索や逮捕の権限を持つ200人規模のサイバー特別捜査隊を警察庁関東管区警察局に新設する―というもの。

 これは、戦後の警察のあり方の大転換であり極めて危険な内容だ。

 最も重大な問題は、国家機関である警察庁にサイバー警察局を新設し、捜査権限を付与することだ。

 中央集権的な戦前の国家警察は、天皇制軍国主義の下、特別高等警察(特高)に象徴される日常的な拷問・人権侵害を行ない戦争遂行の柱となった。その反省から戦後解体され、国家機関としての国家公安委員会と警察庁が自ら犯罪捜査を行なうことは否定され、捜査権限は自治体警察にしか認められなかった。

 サイバー領域だからといって捜査権限を警察庁に認めることは、戦後の民主化で否定された国家警察の復活につながる。今後、他の警備公安・交通など警察庁の所掌事務についても警察活動を認めることになりかねない。

 すでに14都道府県警察に「サイバー攻撃特別捜査隊」が設置され、対応している。新たに警察庁に犯罪捜査の権限を付与する必要などまったくない。

通信・表現の自由侵害

 法案で新設されるサイバー警察局が対象とする「サイバー領域」とは、私たちが日常的に利用する電子メールやSNSなどによるコミュニケーションの場だ。警察の介入で「通信の自由」「表現の自由」 が侵害される危険性がある。

 法案では、「重大サイバー事案」などの対象領域は、「国、地方公共団体の重要情報インフラ及び国民生活、経済活動の基盤で重要な影響を及ぼすもの」と何とでも解釈可能なあいまいな定義だ。しかも、政府答弁(3/2)では、サイバー事案の対象になる重要インフラとは、情報通信・電力・ガス・医療・水道・クレジットなどの14分野とされた。私たちの日常生活全般をカバーすることになる。

 さらに、「取得した個人情報は関係法令に基いて適正に扱う」と答弁するのみで、歯止めはない。まさに警察が国家警察として市民監視社会をつくるものだ。

個人情報丸ごと管理

 警察庁は、かねてから個人情報を一元的に管理しようとしてきた。「2020年警察情報管理システム調査研究報告書」によれば、個人情報の都道府県警察の分散管理に例外を設け、「全国共有が可能なデータや警察庁への送受信が必要なデータ」は「警察庁が管理するデータとして一元的に集約を行う」という。

 国の機関である警察庁が初めて捜査権限を持つこととあわせて、本来別々の目的で収集され目的外利用・提供をすべきでない、都道府県警察の管理する刑事部門の捜査情報、生活安全部門の相談情報、交通部門の運転免許等の情報、警備部門の治安情報を一元管理し、市民生活の大量監視のための利用を可能にしようとしているのだ。

 国家警察の復活と全市民の監視強化を許してはならない。集会や国会議員への要請ファクスなど地域から法案反対の声を大きく広げ廃案に追い込もう。



 
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