2022年03月25日 1716号

【未来への責任(344) 韓国 政権交代でも 植民地主義清算は必須】

 3月9日に実施された韓国大統領選挙で、野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソギョル)候補が当選した。2016〜17年のキャンドル革命の中から誕生した「市民革命政権」は1期で途絶えることになった。

 なぜ与党「民主党」は敗北し、政権を失ったか。経済政策の失敗(青年の失業率10%超、格差拡大等)、不動産政策の失敗(マンション価格高騰)、民主化闘争世代の“既得権益層”化への反発、など。これにより若者の多くが保守支持に回った。

 昨年のソウルと釜山の市長選で「共に民主党」は惨敗していた。大統領選の苦戦も必至であった。

 しかし、大統領選では尹候補と「民主党」の李在明(イジェミョン)候補の票差は、率で0・73%、票数で24万7千票。史上まれに見る接戦となった。野党は選挙戦最終版に「政権交代」の1点で尹候補と「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)候補の一本化を図り、辛うじて勝利を得たと言える。

 このような接戦となった要因は、文在寅(ムンジェイン)政権に失望した若者の中でも、20代、30代の多くの女性が李候補を支持したからである。20代有権者の47・8%が李候補に投票し、尹候補の得票率45・5%を上回った。特に女性は58・0%が李支持で男性は36・3%だった。30代でも李候補は46・3%に上り、尹候補の48・1%と拮抗した。

 女性がこのような投票行動に出たのは、尹候補が「女性家族部」廃止などジェンダー平等推進に背を向ける政策を打ち出したからだ。また、尹候補が新自由主義路線の継続(規制緩和、財閥企業優先)、高所得層優遇などの政策を採用することへの反発もあった。

 「市民革命政権」は2期目に入ることはできなかったが、希望を未来につなぐことはできたと言える。キャンドル革命は、その担い手として新たに20代の女性層を獲得しつつある。

 日米両政府は保守政権回帰を待ち望んでいた。バイデン大統領は3月10日、岸田首相は11日に尹次期大統領と早々に電話会談を行った。米政権は米韓同盟、「北朝鮮」に対する緊密な連携を再確認した。朝鮮戦争終結は事実上棚上げだ。また岸田首相は、1965年以来築いてきた協力関係を基盤とした日韓関係の発展、関係改善への尹次期大統領のリーダーシップに期待を表明した。これに尹次期大統領は、対「北朝鮮」弱腰外交≠フ撤回を掲げ、日米韓安保協力強化を打ち出し応答した。対日関係では徴用工問題、貿易規制など懸案事項の「グランドバーゲン(一括処理)」を公言している。

 日韓関係は変わっていきそうだ。しかし、被害者はバーゲン品ではない。歴史問題について判断を間違うと、朴槿恵政権の2015年12月「慰安婦」合意問題のように政権に強い批判を招く。議会では民主党が今でも300議席のうち170議席以上を持つ。思うようには進まないだろう。

 植民地主義は清算されねばならない。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)
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