2022年03月25日 1716号

【業者の言いなりで公金投入/大阪カジノは維新の詐欺/住民投票で暴走を止めよう】

 「大阪カジノ誘致についての民意はもう得ている。住民投票は必要ない」と維新は言う。しかし「税金は一切使いません」との公約を連中は破った。通常は事業者側が負担する土壌対策費に莫大な税金を投入するつもりなのだ。「収益の一部を教育・福祉に回す」という宣伝もうさん臭い。これは詐欺だ。

土地整備に大金

 大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)。長らく「負の遺産」と言わてきたこの埋立地が、カジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)の候補地として注目を集めている。ただし悪い注目だ。土壌汚染や液状化などの問題が相次いで明らかになったのである。

 土地所有者の大阪市は約790億円の土壌対策費用を負担することを決めた。内訳は土壌汚染対策費が360億円、液状化対策費が410億円、地中埋設物の撤去費が20億円。松井一郎市長は「誘致を決めた以上、IRが成り立つ土地を提供するのが市の責務だ」と強調する。

 だが、市はこれまで市有地の売却や賃貸の際、こうした費用を公費負担しないことを原則としてきた。それを今回放棄したのは、やはりIR・カジノが市政を牛耳る大阪維新の会の看板政策だからである。

 大阪のIR開発に名乗りを上げた業者は米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの連合のみ。どうしてもIR・カジノを実現したい維新は、唯一の応募者が提示した破格の条件を飲んだ。要は足元を見られたというわけだ。

 一連の経緯は3月3日付のダイヤモンド・オンライン配信記事が詳しい。同誌編集部が情報公開請求で入手した大阪市の内部資料によると、MGM・オリックス連合は「東京ディズニーランド並みの液状化対策」を公費で行うよう市側に要望していた。

異例の公費負担

 液状化現象とは、地震の強い振動で地盤が液体状になる現象のこと。川や海を埋め立てた土地で起こりやすく、東日本大震災では千葉県浦安市の住宅街などで、支えを失った建物が傾いたり、道路が広範囲で陥没する被害が発生した。

 だが、同じ浦安市の埋立地でありながら、東京ディズニーランドの敷地内は大きな被害を免れた。強く締め固めた砂杭を地中に造成する「サンドコンパクションパイル」工法を用いた地盤改良工事を施していたためと見られている。

 工事は運営会社のオリエンタルランドが自ら費用を出して行った。事業者として当然の責任である。ところがMGM・オリックス連合は公費負担で行うよう迫った。夢洲を所管する大阪港湾局は「前例がない」と反発したが、結局、松井市長の強い意向で全額公費負担の方針が決まった。

 ちなみにIR事業者は市との定期借地契約にもとづき毎年25億円の賃料を払う。契約期間が35年だから単純計算で市の収入は875億円となる。かろうじて土壌対策費の790億円を上回るが、東京の豊洲市場用地のように工事費用が想定より膨らめば、赤字に転落する恐れがある。

業者は損しない

 このように、維新市政はカジノ業者が絶対に損をしない条件を市民に無断で約束した。MGM・オリックス連合が設立した大阪IR株式会社と交わした基本協定もしかり。国内外の観光需要がコロナ禍前の水準まで回復していると見込めない場合、事業者は契約を解除できるとの規定が盛り込まれているのである。

 地盤沈下や液状化、土壌汚染など「事業の実現、運営、投資リターンに著しい悪影響を与える事象」が生じた場合や、それに対する市側の対応が不十分と事業者がみなした場合も契約解除=撤退できる。

 カジノ事業者はノーリスク、大阪市は丸損のリスクを負う不平等協定だが、それでも松井市長は「市民負担ではない」と強弁する。IRが軌道に乗れば、事業者から年間1060億円の納付金が府・市にもたらされるというのが理由だ。

 この宣伝も怪しい。1060億円の納付金はカジノの収益予測(年間4200億円)が根拠になっている。大阪がモデルとするシンガポールの2つのIRの場合、年間6500万人が来場し、カジノ収益は3700億円になる。来場者見込みが年間2000万人の大阪IRがシンガポールの収益を超えるとは考えられない。

 そもそも来場者数の見込み自体が誇大である。関西最大の集客力を誇るUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)ですら、年間来場者数が1500万人を超えたことは一度もない。「カジノで儲けて教育・福祉・医療に回す」なんて、夢のまた夢と言えよう。

 このように維新のカジノ皮算用は妄想である。詐欺師集団の暴走を止めるのは市民の力しかない。(M)

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