2022年03月25日 1716号

【3・11フクシマから11年 声上げる避難者・市民 避難者住まいの権利裁判提訴 住宅を奪うのは許せないと11世帯】

 原発事故避難先の国家公務員宿舎からの退去と損害金を請求されている区域外避難者11世帯が3月11日、福島県に1世帯100万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。原告は、本来なら避難者を救済すべき行政が住居を奪い精神的経済的に追い詰めるのは許せない、と立ち上がった。

 「原発事故避難者住まいの権利裁判を支援する会」は衆院第一議員会館で報告集会。避難者で代表世話人の熊本美彌子さんは“2倍家賃の請求停止を求める署名”4万7029筆の復興庁提出を報告した。「みなさんに(避難者の存在が)忘れられたのではと不安があったが、光が当たった」。同じく代表世話人の村田弘さんは提訴に至る経過を報告し、弁護団長の井戸謙一さんが裁判の争点を説明した。「2017年3月で住宅提供を打ち切ったこと自体が居住権の侵害に当たる。違法性を国際法に照らして明らかにする」

 原告は、ほとんどが非正規職で休暇もとれない。会場では音声による原告の訴えが流された。福島県はこれまで▽3度にわたる法的手段による強制退去の脅し▽毎月「2倍の家賃相当分を支払え」と請求書送付▽福島の実家への訪問―などで家族の分断を図ってきた。江東区・東雲(しののめ)住宅に住む男性(40代)は「県は福島の実家を勝手に調べ、高齢の母親を尋ねて退去を迫る。許せない」と怒る。埼玉住宅に母子避難した原告の夫(50代)は「放射能被ばくを避け、4人の子どもを必死に育てている妻を精神的に追い込んでいる」と抗議した。

 「緊張で前日は眠れなかった」という原告の女性(50代)は、支援の広がりを目の当たりにし、勇気を出してマイクをとった。「いつ福島県から訴えられるのか不安の募る毎日だ。自分個人ではもうどうしようもない状況。皆さんの力を借りて乗り越えたい」との言葉に、会場からは励ましの拍手が起こった。

 代表世話人の武藤類子さん、渡辺一技さんが「一緒に闘う」と決意を述べ、立憲民主党・山崎誠衆院議員、社民党・福島みずほ参院議員ら国会議員3人も支援の決意を語った。

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