2022年04月01日 1717号

【ZHAPオンラインパネル/沖縄新基地問題を米国市民と/反基地運動の国際連帯強化へ】

 沖縄・辺野古新基地建設をとめるためにZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が米国最大の社会主義団体DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)とともに取り組むZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)。3月20日(日本時間)、はじめてオンラインでパネルデスカッションを開催した。日米両国の市民に、日米の対中国軍事緊張戦略の最前線にある沖縄・南西諸島の状況を伝え、軍事基地撤去に向けた連帯行動を呼びかけた。

 パネリストは3人。ZENKO事務局の森文洋さんは「沖縄の軍事化と自衛隊海外派兵」について、土木技術者の奥間政則さんは「辺野古の構造上の根本的欠陥」を、DSA国際委員会のパターソン・デッペンさんは「軍産複合体と反基地闘争」について報告した。


戦争は基地から

 ZOOMウェビナーの参加者からいくつかの質問が出された。「南西諸島のミサイルは日本の防衛に必要なのか」「米軍には必要のない辺野古基地、完成のめども立たないようだが」――。

 森さんの答えは「ミサイルは攻撃のため。日本を守るものではない」。

 沖縄・南西諸島へのミサイル配備とそれに反対する市民の抗議行動を紹介した森さんは、自衛隊が米軍や他の多くの国の軍隊と合同軍事訓練を重ねている事実を示し、戦争放棄を宣言する憲法を持つ日本が海外派兵の準備を進めている実態を明らかにした。

 その演習場は九州沖からフィリピン、インド沖まで、中国を取り囲む海域で実施されている。南西諸島のミサイルは中国にむけられている。「辺野古の新基地は自衛隊が使いたいから、無理を重ねて日本政府が建設している」と指摘した。



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 奥間さんは、基地の完成は不可能である工学的理由を解説した。

 基地建設地に広がる軟弱地盤の存在と耐震設計の誤り。長さ90bを含む7万本もの砂杭による地盤改良工事は施工機械もなければ、施工期間も想定できない。仮に完成したとしてもわずかな地震で崩壊する設計上の欠陥を明らかにした。

 奥間さんは「ウクライナ戦争でもわかるように、基地が真っ先に攻撃を受ける」と沖縄・南西諸島が戦場にされることを強調。軍事基地そのものの危険性を語った。辺野古には2つの断層(活断層の可能性)に挟まれた米軍キャンプ・シュワブの弾薬庫があり、核貯蔵の疑いがあることも指摘した。自然災害でも戦争でも危険な施設が集落の近くに現存しているのだ。



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 「ウクライナ戦争に米国の軍産複合体はどう関係しているのか」。質問に答えデッペンさんは「戦争で儲けるのが産軍複合体であり、その株主だ」。

 デッペンさんは、在外米軍基地の分布がわかる地図を示した。80か国、約750か所に及ぶ。100か所以上集中しているのは、日本とドイツ以外にないことがはっきりとわかる。

 バイデン政権は8000億j(約94兆円)もの軍事費を計上。これまで政権が民主党であろうが共和党であろうが、軍需産業は着実に利益を伸ばしてきた。その株主には47名の下院議員が名を連ねているのだ。


国際的なネットワークへ

 デッペンさんは、ZHAPキャンペーンを拡げるための3つの目標を提起した。辺野古現地で起きていることを理解し、米国内外の先住民や植民地支配されている人びと、労働者階級の闘いと結んでいくこと。DSAのより多くのメンバーがZHAPキャンペーンに参加し、国際連帯の輪を拡げること。DSA国際委員会が国内外で培っている国際主義と反帝国主義の闘いの一部となること。

 辺野古反基地闘争が国際的な連帯行動の重要な役割を果たす期待が込められている。参加者から「米国内で基地被害にあっている人びとが国外の反基地運動と連帯するにはどうすればよいか」「沖縄訪問など、現地の活動家と連絡を取るには」などの反応があった。

 パネリストの3人は、異口同音にZHAPの役割に触れた。このオンラインパネルの前日、沖縄で開催された「ノーモア―沖縄戦 命(ぬち)どぅ宝の会」の集会(5面に関連記事)が紹介された。沖縄で活動する主要なメンバーが集っている。ZHAPの呼びかけ人も多く、ZENKOが連帯の窓口となれると答えた。

 ZHAPがDSAの賛同を得て公式にスタートしたのは昨年5月だった。月2回の国際会議を重ねながら、オンラインパネルの実現にこぎつけた。今回は辺野古新基地の軍事的役割に焦点をあてたが、環境破壊や民主主義否定の問題へと議論を深め、第2回、第3回と連帯の輪を拡げていく計画だ。

 オンラインパネルは、DSA全国委員会のフェイスブックでライブ配信された。通常、数千人の視聴者があるという。デッペンさんは「今回の取り組みでDSAの運動が広がることをうれしく思う。普天間代替基地の問題は極めて重要で、緊急事態であると考えている。国際的な反基地運動ネットワークをつくっていきたい」とまとめをした。

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 日米両政府に辺野古新基地建設断念を迫る闘いは今年、重要な局面を迎える。米国では中間選挙が、日本では沖縄知事選挙が闘われる。軍事緊張政策を止められるのか、基地建設継続を許すのか否か、日米両市民は政治的選択をすることになる。沖縄の施政権が米国から日本に返還されて50年。「復帰」を祝えるかどうかは、基地建設阻止の闘いにかかっている。

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