2022年04月01日 1717号

【ウクライナ戦争 殺すな 即時停戦せよ/戦争は権力者間の殺し合い 犠牲は今回も市民に】

 ウクライナ大統領ゼレンスキーが3月23日、国会で演説した。英国(3/8)、カナダ(3/15)、米国(3/16)、ドイツ(3/17)、イスラエル(3/20)での議会演説に続くもので、各国議会はこぞって、ゼレンスキーにエールを送った。

 戦争犯罪者<鴻Vア大統領プーチンに抗し、正義を守る<[レンスキー。欧米、そして日本の主要メディアは、この構図から外れる情報を省くことで、徹底抗戦をあおっている。

 ロシア軍の戦争犯罪を糾弾し、直ちに撤兵を要求しなければならない。だがその一方、ゼレンスキーを全面的に支持してよいわけではない。戦争は殺し合いだ。しかも権力者が選択したものであり、その目的は利権と自己保身にあるからだ。

戦争犯罪の事実

 報道によれば、ロシア軍は国際法で禁止される燃料気化爆弾やクラスター爆弾を使用した。

 ロシア軍は3月4日、燃料気化爆弾ロケットをキエフ北方チェルニヒウの作戦で使ったと、英国防省が公表した(3/10英タイムズ)。ロシア国防省系テレビ局が実戦投入を報道したという。

 また、クラスター爆弾が人口密集地で使われたと国連人権委員会は3月11日、公表した。他にも病院や避難所への爆撃など、ロシア軍の国際法違反事例が連日報道されている(ロシアは一部否定している)。

 ウクライナ軍の動向はほとんど報道されていない。

 ウクライナには2つの軍隊がある。大統領を最高司令官とする軍隊と内務省に属する国家防衛隊だ。防衛隊は2014年に東部の親露派武装勢力と戦うために組織されたのだが、その中心的存在がアゾフ連隊と称するネオナチ集団だ。日本の公安調査庁も「欧米を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘」「約2千人がウクライナの戦闘に参加」と記している集団である。

 公安調査庁が情報源としている米調査会社SoufanCenterの報告書(19年9月)によれば、19年6月までにウクライナに来た外国人戦闘員は55か国、1万7千人を超えているという。

 ロシア軍が爆撃したとされる病院や劇場(避難所)があるマリウポリはアゾフ連隊の最前線基地。マスコミは高齢女性(79歳)や子ども(10歳)が銃の手ほどきを受ける写真を賛意をもって拡散したが、軍事訓練を行うネオナチ集団の素性を知らせることはない(https://worldbeyondwar.org)。

 ウクライナのネオナチ集団は米CIA(中央情報局)が資金や軍事訓練の支援を行い、14年の「マイダン革命」で暗躍した。市民や警官を狙撃し平和的デモを暴動化させ、親露派大統領を追放するクーデタ―の中心的役割をになった(SPUTNIK18年2月14日)。

ネオナチ集団

 南部の都市オデッサでは「マイダン革命」を批判する親露派を労働組合会館に追いつめ、生きたまま焼き殺した(14年5月2日)。その後も、東部では市民の財産を略奪したり、精神障害者を虐待するなど犯罪的行為に及んでいることが国連高等弁務官事務所の報告に記載されている。

 ロシアの軍事侵攻によって一躍世界的英雄≠ニなったゼレンスキーだが、ネオナチ団体やナチ運動を非難する決議が21年12月の国連総会に提案されたときに、ウクライナと米国の2か国だけが反対した。ゼレンスキーの国内での支持率は、戦争前には30%を切り低下をたどっていた(STATISTA21年10月)。実際、キエフからの避難者さえフランスのテレビ局のインタビューに、生活苦などをもたらしたゼレンスキーを操り人形≠ニ批判している(3/4)。ゼレンスキーは政府批判報道をするテレビ局を閉鎖するなど(SPUTNIK 21年1月)、プーチンと変わらぬ弾圧を行ってきたのだ。



  *  *  *

 かつてイラク戦争で、米軍や民間軍事会社による蛮行を明らかにしたのは、フリージャーナリストらの取材だった。ウクライナで今何が起こっているのか、欧米メディアの情報だけに頼るわけにはいかない。

 しかし、どちらの攻撃によるのか不明としても、多くの市民が殺され、街が破壊されていることに間違いはない。犠牲者は市民だけではない。ウクライナ兵もロシア兵も、殺戮(さつりく)と破壊が常態化する戦場で心的障害を負うことも忘れてはならない。戦場は人間の尊厳を公然と否定するのだ。

 戦争で守る「国益」は権力者らの権益であって、市民の命や利益とは無縁だ。市民の敵はすべての好戦勢力である。憎悪をあおり敵意を植え付ける言説にくみしてはならない。戦争をあおるな。ただちに停戦せよ。

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