2022年04月01日 1717号

【福島と共に。反原発全国のつどい 「事故は過去」の策動に立ち向かう 避難者の権利守る闘い】

 3月16日深夜のマグニチュード7を超える福島県沖大地震。地震のたびに原発は大丈夫かと心配は絶えない。収拾のめどの立たない廃炉、廃棄物・汚染水処理。原発事故被害者の健康不安、住宅追い出し、一方で進む再稼働…と問題は山積する。

 福島原発事故の被害に関して、政府と福島県は“健康被害は心配ない。残るは「風評被害」の払拭(ふっしょく)とこころのケア”の姿勢で帰還政策を強行している。子どもの健康被害を指摘した元首相5人の表明に対し「風評被害をあおり子どもたちを不安に陥れるもの」と抗議する政府と県知事。異常なまでの原発事故「収拾」キャンペーンだ。

 そんな中、3月20日の「福島と共に。反原発全国のつどい」(主催―ZENKO〈平和と民主主義をめざす全国交歓会〉反原発分科会)では国・県の「風評被害」、帰還強要の誤りを突く取り組みが交流された。

住宅追い出し許さない

 その一つが区域外避難者にかけられた住宅提供打ち切り・追い出し問題。「原発避難者住宅追い出しを許さない会」代表の熊本美彌子さんは「2017年3月の打ち切り自体が違法だ。災害救助法で対応することは無理で、新たな立法か、国際人権法に従って、居住権は守らなければならない。行き場を失った避難者を救済する行政が逆に精神的に追い込んで提訴するなどもってのほかだ」と怒る。

 「許さない会」は、国家公務員宿舎に住む避難者が福島県から明け渡しと損害金を請求され20年3月、福島地裁に提訴されたことを受けて結成された。今年3月11日には同じく国家公務員宿舎の避難者が福島県を相手に一人100万円の損害賠償を求めて東京地裁に集団提訴。熊本さんはこの「原発事故避難者住まいの権利裁判を支援する会」の共同代表も務める。両裁判とも争点は同じだ。避難者は原発事故に対応する法・制度の欠落による犠牲者であり、追い出しは国際人権法に反すると訴える。

 支援する会共同代表でかながわ訴訟原告団長の村田弘さんは「311子ども甲状腺がん訴訟と住まいの権利訴訟は被害の本質を問う鋭い闘いだ。井戸川被ばく裁判や各地の原発再稼働阻止の闘いと連携を強め、勝利させなければならない」と、意義を述べた。

甲状腺過剰診断説は破綻

 福島県では避難指示解除に合わせて医療費公費負担の終了や健康検査の縮小が図られ、帰還強要が進む。

 この状況に、医療問題研究会の山本英彦医師は警鐘を鳴らす。統計数値を示し、「小児甲状腺がんの異常多発については国や県も否定できなくなった。そこで、スクリーニング効果や過剰診断説で放射能との関連を打ち消そうとしているが、県内4地域での甲状腺がん発見率のばらつきは明確で、それには答えられない」と指摘。がんと被ばくの関連性を否定する甲状腺検査評価部会が、その根拠データとしてUNSCEAR(アンスケア)(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)を使っている点に触れ、「県内4地域の線量別4群わけでは、双葉地域や中通りも低線量に区分されている。これでは、地域ごとのばらつきの評価はできない」と批判した。「子ども甲状腺がん裁判で声を上げた6名のうち4名は再発している。それでも過剰診断と言うのか。風評被害ではない」と支援を訴えた。

 若者の立ち上がりを紹介したのは九州訴訟原告の内藤哲さん。3月16日の国連人権理事会総会で若者が「日本政府は住宅支援を打ち切り。立ち退きを要求され福島県によって提訴されている避難者もいる」とスピーチした。内藤さんは「この金本暁さんは20歳代。九州訴訟原告団の共同代表で頼もしい。若い世代の声を世界に広げたい」と、闘いの継承を喜ぶ。

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 主催者から今後の行動が提起された。原発集団訴訟で国の責任を確定する最高裁判決獲得に向けた4月の3訴訟弁論支援、2つの避難者住宅裁判支援、原発被害者への医療費公費負担の継続等を求める緊急署名などが呼びかけられた。



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