2022年04月01日 1717号

【さかいみほのじゃらんじゃらんinインドネシア/ジャカルタ編その7/長者番付にならぶ華人】

 皆さまお元気でお過ごしでしょうか。冬の厳しさから抜け出したかと思えば、花粉症のシーズンとなりました。日本は(筆者にとって)優しくない気候ですね。インドネシアでの暮らしが懐かしいです。

 華人のお話は続きます。先のコラムでも取り上げた相沢『国家と華人』によれば、スハルトに最も近い、インドネシア戦略国際問題研究所(CSIS)設立者の一人であるユスフ・ワナンディ(西スマトラ出身のワナンディ・ブラザーズと言えばとても有名です)は、スハルトにとって華人とは「妾(gundik〈注〉)」(原文ママ)であり、一緒に遊び楽しむのはよいが、存在は認めなかった旨を語っています。政治活動やファミリービジネスのために利用し楽しむが、決してその存在を公にはしない、脅威になれば別れる、インドネシア国内の華人(特にスハルトに近い資本家)の立場をうまく表現した言葉と思いました。

 雑誌『フォーブズ』の最新2021年インドネシア長者番付で1位は、ハルトノ・ブラザーズでしたが、50位以内にはたくさんの華人資本家がランクインしています。

 タバコ好きの方は、インドネシアのタバコを嗜(たしな)まれたことがあるかもしれません。丁子(ちょうじ)(クローブ)の甘い香りが独特です(日本のタバコと比較してニコチンやタールの量も多く感じますが)。丁子タバコ製造から始まった福建省出身の華人Oei Wie Gwan(オイウィーグワン)のビジネスは、息子兄弟が引継ぎ多角化し、タバコ最大手Djarum(ジャルム)をはじめ、ホテル インドネシア・ケンピンスキー、高級ショッピングモール グランドインドネシア、家電のポリトロン、BCA(アジアセントラル銀行)など、ますます発展していきました。(続)

(筆者は2020年までインドネシア在住)

〈編集部注〉gundikとは、妾、側室など正式な婚姻関係を結んでいない間柄の女性、特に社会的・種族的・宗教的に男性と差異がある場合をさす。

ジャカルタ市街中心地(ホテルインドネシアロータリー)付近のBCAタワー、グランドインドネシア(モール)、およびホテルインドネシア・ケンピンスキー
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