2022年04月01日 1717号

【みるよむ(614) 2022年3月19日配信 イラク平和テレビ局in Japan 市民の要求に応えない イラクのカディミ政権】

 イラクのカディミ現首相は、市民デモを弾圧し多くの犠牲者を出したマフディ前政権の後に首相に就任した。このカディミ政権は何を行っているのか。2022年1月、サナテレビはその実態について報道した。

 2020年5月に就任したカディミ首相。現在のところ、マフディ政権のように市民デモに対して暴力的弾圧や殺害をしているという報道はあまり見かけない。もし市民の意思を尊重するつもりがあるのなら、公正な選挙を実施し、市民の命を奪った連中を裁判にかけなければならない。失業をなくし、社会サービスを再建しなければならない。

 ところが、カディミ首相は市民の願いに何ひとつ応えていない。サナテレビは「デモ隊の殺害者たちは、そのほとんどが裁かれなかった」と批判する。

 サナテレビは、2020年9月にイラクのキーカード社の取締役が多額の横領のあげく国外逃亡を図った事件を取り上げる。この人物は確かに逮捕された。しかし、裁判所が出した判決はわずか懲役3年だ。一方、汚職まみれの政府への抗議デモに参加したある活動家は、懲役15年の刑を受けている。不合理な扱いが平然と行われている。

宗派私兵「対策」も放棄

 カディミ政権は、市民を暴力支配するイスラム宗派の私兵を押さえる対策の実施と口にしている。しかし、宗派の私兵がカディミに対し「耳を切り落とす」「アメリカの手先だ」などと脅しをかけると、カディミは形だけの取り締まりさえ引っ込めてしまった。

 カディミ政権は、グローバル資本とイスラム政治勢力の利害のために動く政府だ。日本政府と企業も同政権に「経済援助」を行い石油利権の獲得を続けている。カディミ政権に対し、イラクの市民、労働者は一向に改善されない雇用や医療などを要求して声を上げている。日本から連帯していくことが必要だ。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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