2022年04月08日 1718号

【MDS18の政策―誰にでも教育の機会の保障を(6)/日本の「奨学金」は返済能力未知数の借金】

 日本の大学生・短期大学生の約50%が利用している独立行政法人日本学生支援機構の奨学金は、「貸与」なので将来の「返済」が義務となる。

 一般に借金には、審査がある。資金を貸す側が、借り手の返済能力を評価するのだ。クレジットカード(会社が代金を立替払いし、カード所有者に請求するという形での借金)の申し込みには、職業、勤続年数、年収、家族構成、持ち家か否かなどを申告し、カード会社は返済能力を測る。住宅ローンや自動車ローンは、返済能力の審査だけでなく、返済不能となった場合に貸し手が借金の対象となった物件を売却して回収することもできる。

 これらは、貸し手が貸金を回収するためのものだが、借り手がその経済力を超えた借金を抱えることを防いだり、返済不能になっても売却によって返済することで生活そのものが追い詰められるまでには至らないといった効果もある。

返済能力問わぬ貸し込み

 では、支援機構の奨学金はどうか。

 そもそも、学生が進学するための資金を貸すのが貸与型奨学金だ。借りる時点で、卒業できるかどうかは分からない。卒業後の雇用・起業の可否も不明。つまり、借り手の返済能力を測ることなく、借り手が望む金額を貸し込む。返済不能におちいった時のために、連帯保証人(原則父母)、保証人(別生計の親族)の設定(人的保証)が求められる。人的保証以外に保証機関による保証も選択できるが、毎月貸与される奨学金から保証料が差引かれる。

 つまり、貸し手は人的保証・機関保証で回収が見込めるが、借り手は返済能力のめどがないまま数百万円以上(4年制大学で上限576万円、医学部等の6年間では同1152万円)の借金を抱えることとなる。貸し手と比べて借り手のリスクが極めて大きい制度だ。

 返済免除は、死亡または障害による労働能力の制限・喪失か、貸与期間中に修士・博士課程等で「特に優れた業績」をあげた人のみ。雇用形態・収入状況は考慮されず、たとえ生活保護受給者となっても返済を続けなければならない。救済措置はわずかで、制約が厳しい上に返済時期が先送りされるだけの「猶予」があるだけだ。

 この借り手の返済能力が不明のうちに貸し込んで、卒業後の収入状況に関わらず返済が始まる≠アとが、とりわけ「就職氷河期世代」と呼ばれる人びと以降の非正規雇用の若者が苦しむ原因となっている。(続く)
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