2022年04月08日 1718号

【フリースペースひまわり 講演会「コロナ禍を生きる子どもたち」 子どもの思い受けとめて声上げる】

 3月20日、不登校などの子どもたちの居場所を運営するフリースペースひまわり(大阪市城東区)は、心理カウンセラー・内田良子さんの講演会「コロナ禍を生きる子どもたち―子どもの声を受けとめて私たちにできること―」を市内で開催した。新型コロナによる医療ひっ迫が続いていたため、オンラインでの講演会に変更し、会場参加を合わせ32人が参加。ひまわり代表の小川裕子さんに報告を寄せてもらった。

 ここ数年、不登校の子どもの数は増え続けていますが、文科省や教育委員会が、学校は変えずに、子どもに学校復帰か学校の外で学習かを求める構図は変わっていません。長引くコロナ禍で子どもの生活がさらに過酷になっているのではないかと思い、子どもの側に立って親・大人ができることを考えあうために講演会を企画しました。

 内田良子さんは、東京で子ども相談室「モモの部屋」を主宰し、不登校・ひきこもりの子どもの立場に立って親とともに考える相談活動をされています。

居場所でない家庭・学校

 講演で内田さんは次のように語りました。

 ―コロナ禍によって子どもは自由に友達と遊べず、オンライン学習で家庭が学校化し、家庭によって教育格差ができています。保護者も在宅ワークで家庭が職場化したり余裕がなくなっています。学校でも先生がコロナ対策のため、子どもたちに対して管理的になり罰が多くなる。子どもは何のために学校に行くのかわからない。相談で急速に増えたのが小学校低学年の登校拒否・不登校です。家庭も学校も、子どもの居場所として機能しなくなっています。

 1990年代の文科省の不登校対策は「早期発見、早期学校復帰」で、子どもを早く戻すために学校に「心の居場所」をつくるとして、適応指導教室や保健室などへの別室登校が取り組まれました。こうした対策をとる学校の側に親が協力することで、親と子が分断されて子どもが孤立しています。さらに最近は「不登校の未然防止対策」になり、子どもはますます休めなくなりました。また、無理な登校で心身の不調が出た子どもに、学校や先生から精神科や心療内科の受診や服薬を勧められることもあります。

 不登校の子どもを教室外(適応指導教室、特別支援学級・学校、不登校特例校など)へ出す流れが加速し、民間教育産業も参入して、公教育が空洞化するのではないかと感じています。

 講演で、政府・自治体の不登校対策が不登校の子どもを生み出していることがはっきりしたと思います。こうした教育政策に対して、家庭を居場所にして子どもが休養・回復することの大切さを内田さんは強調しています。「ただ一言『休んでいいよ』と言ってほしかった」という子どもの言葉に凝縮されていますが、そのために親や周りの大人が子どもの側に立ってその言葉を受けとめることが必要だと再認識しました。

同じように悩んでいる

 質疑応答や講演会後の相談交流会では、不登校当事者の保護者や家族から、子どもへのかかわり、学校とのかかわりをどうするかなどの質問や相談が寄せられました。「学校や相談機関とのやりとりで感じてきた疑問、不信感が国が勧める対応だったことを知り愕然(がくぜん)とした。子どもに寄り添ったものでないのは悲しい」「ほかの参加者の人たちも同じように悩んでいるんだなと思った」「誰のための学校なのか大人が今一度考えないと」といった感想も寄せられ、思いが伝わったように感じています。

 内田さんが講演の最後に話された「子どもたちが安心・安全に学べる学校を用意するのが国の義務。子どもを何とかしようとするのは間違い。見当はずれの対策、そこから来る間違った対応が子どもと家庭を追い込んでいる。このことに大人が無関心であってはいけない」という言葉のとおり、自分たちが政府の政策に意見を言い、変えていかなければと改めて思いました。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS