2022年04月08日 1718号

【原発避難者 ノ―追い出し訴訟第6回弁論 早期結審の策動阻み 実質審理へ反転攻勢】

 3月25日に福島地裁で開かれたノー避難者追い出し訴訟の第6回口頭弁論。「早期結審は許さない」と約30人がかけつけ、緊迫した面持ちで法廷を埋めた。

 2月4日の第5回弁論直後に「原発避難者の住宅追い出しを許さない会」が呼びかけた徹底審理を求める緊急オンライン署名は800、要請ハガキは500を超えた。審理途中でのこうした取り組みは稀だ。

 これまでは原告(福島県)代理人の顔ばかりを見ていた小川理佳裁判官がこの日は一転、被告(避難者)の柳原敏夫弁護士とだけやり取りし、最後に原告側に「反論は、いつごろ提出できるか」と一言。「5月にならないと」との返事で、結審の可能性もあった当初予定の4月26日の期日を取り消し5月24日に次回口頭弁論を入れた。

 避難者側は前回弁論後に、被告主張の集大成、国際人権法の直接適用、6人の証人の申請、原告としての資格の有無など全面にわたる論点を提出した。裁判官は慎重な扱いへと変わった。

 弁論終了後、参加者はひとまず危機は乗り切れた≠ニほっとした表情に。「反転攻勢だ」との声も飛ぶ。避難当事者の男性は「支援のみなさんの力だと思う。励まされる」と喜ぶ。法廷での弁護団による県当局への鋭い批判と連携し、ネット署名とハガキを通してこの裁判に全国が注目していること、福島在住者が避難者を支援していることをアピールした力は大きい。

 報告集会で、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)の武藤類子共同代表は「何度も知事との直接対話を求めてきた。証人として知事を引き出せれば」と期待を込める。住宅提供打ち切りが決められたのは2015年6月13日から15日の間。原発避難者救済の法律がない下で、災害救助法の適用さえ終了して避難者を無権利状態に追い込んだ国と内堀知事の協議内容とその違法性を問うために知事の証人尋問は不可欠だ。

 柳原弁護士は「2名の避難当事者の立証だけでなく、真相解明のため内堀知事をはじめ4名の証言が必要だ」と訴える。「次回は県側の『認否反論』への反論、原告に提訴の資格があるのか否か、争う。証人採用の前にまだ審理すべきことがある」と述べた。

 3月11日に同様の争点で県を相手に東京地裁に提訴した「避難者居住権裁判」(井戸謙一弁護団長)とともに、住宅切り捨ての違法性を徹底して問いただす。

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