2022年04月15日 1719号

【みるよむ(616)20222年4月2日配信 イラク平和テレビ局in Japan 粘土とトレーラーハウスの教室 石油収入増でも学校は放置】

 現在イラクの財政収入は回復している。ところが、公立学校の教育条件は劣悪なままだ。2022年2月、サナテレビは南部バスラでこの問題を取材した。

 冒頭、地域の男性がバスラの3つの小学校のようすを説明し、「この廃墟の学校の教室を見てください」と訴える。映し出される小学校は、粘土で壁を築いたり、トレーラーハウスを流用して教室にしている。薄い壁が壊れている教室もある。トイレに至っては、工事現場のように便器や個室の壁が散乱している。

 子どもたちが授業を受けている場面がある。1クラス70人にもなる詰め込みだ。床が泥だらけのままの教室さえある。

 国連児童基金(ユニセフ)はイラクの学校の50%を復旧・復興しなければならないと指摘する。子どもたちの半分がまともな教室で授業を受けていない。

 2003年の占領直後も、学校の多くが破壊され、大人数授業が放置されていた。あれから19年もたったが、今なおこの惨状なのだ。

教育予算も汚職の食い物

 イラクの国家財政は、最近の原油価格上昇もあり、必要な予算を教育に回すことが可能なはずだ。ところが、現在も粘土やトレーラーハウスの学校ばかり。教育学を専攻した大学卒業生は多いが、教員の配置はない。教科書も満足にない。

 サナテレビは、教育予算も汚職の食い物にされていることを批判する。それでは学校の建物もまともなものはできないだろう。政府は公教育を破壊して民営化を進めている。さらに、きちんとした教育をしないことで政府や社会に対する批判的な目を持たせないようにしていると指摘する。

 イラク政府は、豊かな石油資源による利益をグローバル資本のためにしか使わない。サナテレビは、この状況に対し、子どもの教育の権利を求めて立ち上がろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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