2022年04月15日 1719号

【南西諸島軍事要塞化は許さない/ZENKOが現地を連帯訪問(上)/基地建設が狙われる馬毛島】

 日米両政府は対中国包囲網の最前線として沖縄・南西諸島の軍事要塞化を加速させている。こうした動きに抗う市民の闘いが各地で進められている。5〜6月に行うスピーキングツアーに向けて、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は、鹿児島県の種子島、奄美大島を訪問し、現地の人びとと交流した。概要を報告する。

日米共同の基地計画

 西之表(にしのおもて)市の馬毛島(まげしま)は種子島から西へ約12qに位置する。ここに日米が共同使用する軍事施設が造られようとしている。地元住民への説明もないままに、2022年1月7日、日米両政府が突如「候補地」から「整備地」になったと発表した。4月2日には岸防衛相が視察に来るなど、馬毛島の基地建設反対運動は重大な局面を迎えている。



 馬毛島は現在は無人島だが、ピーク時には113世帯528人の住民が暮らし、小・中学校もあった。人々は農業や漁業で生計を立てていた。しかし、厳しい自然環境と島の開発計画の失敗で1980年4月に無人島となる。

 2007年、硫黄島で行っている米軍空母艦載機離発着訓練(FCLP)を移転する候補地に馬毛島があがっていることが報道された。国は当初否定するが、2011年6月の日米安全保障協議会(2プラス2)で「FCLPの恒久的な施設として使用する候補地である」と公表。1972年の沖縄復帰以後、まったく米軍施設のなかった地に新たに建設されることになれば、初めての事例だ。

 また、米軍だけでなく自衛隊員150〜200人が配備され、南西諸島の軍事要塞化の訓練施設・整備補給拠点となる。馬毛島の基地整備計画では2本の滑走路や揚陸施設を有し、陸海空自衛隊による12種類の訓練が想定されている。ステルス戦闘機F35Bが搭載される予定の海上自衛隊「護衛艦」=空母の入港も可能となる。つまり、陸海空自衛隊と米軍の機能が集結した、これまでに類をみない軍事拠点が造られようとしているのだ。タッチ&ゴーなどの飛行訓練は年間約3万回に及び、米軍は夜間の飛行も約600回行う計画である。騒音被害は人々の生活や周辺の自然環境に大きく影響する。

自然破壊は必至

 かつては緑の生い茂った自然豊かな島であったが、土地造成により地面がむき出しとなっている。基地が造られれば島に住むマゲシカ(馬毛島のニホンジカ)が絶滅する恐れもある。

 馬毛島周辺は良好な漁場でもあった。しかし、すでに漁業にも影響が出ている。腐葉土が藻場やプランクトンを育て、それを食べる小魚、その小魚を餌にする大きな魚が生息していた。その自然の循環が破壊されている。

 漁獲量が減少した漁師は生計が立てられない。ボーリング調査の時期には、漁師が海上タクシーとして8時間×3交替、日当約7万円で協力させられた。海上タクシーを行うには、基地建設に反対しないと約束し署名する必要がある。沖縄・辺野古の監視船と同じ構図である。基地建設は漁師の生活の糧を奪うと同時に、漁師の誇りや魂を殺すようなものだ。ある漁師の男性は「これまで馬毛島で漁をして生活してきた。これからも生活できるか不安だ」と語った。

 米軍・自衛隊基地から有機フッ素化合物PFOSなど汚染物質の流出が問題となっている。馬毛島から流れ出した場合、生態系への影響は馬毛島周辺にとどまらない。黒潮に乗って九州へと汚染は広がる。

 馬毛島の基地建設はボーリング調査を終えたのみだ。今なら止められる。八坂・西之表市長は賛否を明らかにしていない。後押しするのは民意だ。馬毛島の問題を全国に発信し、現地の闘いとともに平和を求める市民の声で基地建設を阻止しよう。     《続く》

(ZENKO共同代表・田中拓真)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS