2022年04月22日 1720号

【ベトナム人実習生リンさんは無罪/裁かれるべきは技能実習制度だ/死産児“遺棄”事件 最高裁に署名提出/支援集会に200人超】

 死体遺棄罪で起訴され、有罪判決を受けたベトナム人技能実習生レー ティ トゥイ リンさんの弁護団と支援者が4月11日、最高裁に上告趣意書と無罪判決要求署名を提出。前日10日には都内で支援集会を開き、オンラインを含め200人を超える参加があった。

 熊本県内のミカン農家で働いていたリンさんは20年11月15日、双子を死産。遺体をタオルで包み、弔いの言葉を添えて箱に入れ、一晩ともに過ごす。熊本県警は外国人の重大公安事件として大捜査体制を敷き、4日後に逮捕。マスコミは全国報道した。翌月起訴され、21年7月熊本地裁が、今年1月福岡高裁が有罪判決を言い渡す。外国人女性を起訴しても誰も反対しない、という差別と予断で警察が動き、司法が追認したのだ。

 支援集会でリンさんは熊本からリモート発言。「みなさん、こんにちは」と日本語であいさつした後、ベトナム語でこう訴えた。

 「日本では有罪から無罪となる比率は0・2%。しかし、多くの方から支援していただき、私は自分のためだけでなく、すべての技能実習生や他の女性のためにも最高裁に上訴することにしました」

 「私は絶対に双子の子の体を傷つけたり捨てたり隠したりしていません。血まみれのふとんの上で子どもたちを冷たくさせることはできず、丁寧に箱に白いタオルを敷き、子どもを寝かせ、青いタオルをかぶせました。寒くないよう、少し大きな箱に入れ、ドアの近くにある棚の上に安置。ベトナムでは、棺をドア近くに置いて人びとが遺体を訪問する習慣があります。安らかに天国で元気に暮らせることを願い、子どもたちに手紙を書きました」

 「私が外国人技能実習生だから、私の行動は有罪とされたのではないですか。裁判所は外国人を差別していることになりませんか。私の行為が有罪になったら、孤立流産や死産したケースで母親の運命はどうなりますか。私たちに必要なのは逮捕や起訴、裁判ではなく、治療と精神的なケア、死産の場合に対処するためのガイダンスや保護です」

 「コムスタカ―外国人と共に生きる会」代表の中島眞一郎さんは熊本でのリンさん支援運動について報告しつつ、「最高裁第2小法廷は最高裁長官が裁判長をする一番保守的なところ。司法のあり方を問う闘いになる」と指摘。裁判を傍聴してきた上智大学教員の田中雅子さんは「法廷でのリンさん、とても毅然として素晴らしかった。制服姿の高校生や大学生が傍聴に。若い人たちが非常に関心を持っていたのが私たちの希望」と語った。

 NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事の鳥井一平さんは閉会あいさつで「リンさんに感謝しなければならない。この社会がどんな問題を抱えているか、顕在化させてくれた。被害者のみならず加害者をもつくり出す技能実習制度は1分1秒でも早く廃止を。罰せられるべきは技能実習制度であり、私たちの社会だ」と強調した。

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