2022年04月22日 1720号

【生活直撃する物価急騰 政府の円安政策に責任 ロシア経済制裁で加速】

 生活必需品などの価格が急騰し、市民生活を脅かしている。ある家庭(2人世帯)の3月のガス使用量と料金を見ると、前年同月比で使用量が17・7%減少しているのに料金は10・1%増加した。生活は確実に苦しくなっている。

 物価高の家計への影響は深刻だ。「年収300万円未満の低所得世帯は前年比4・3万〜4・9万円の負担増」との試算があり「消費税3%増に匹敵」との指摘もある(みずほリサーチ&テクノロジーズ、3/29産経)。

 その直接的な要因は原油価格の高騰だ。ウクライナ情勢によるさまざまな原材料価格の上昇も影響している。追い打ちをかけて円安が進み、輸入物価を引き上げているのだ。

円安で負のサイクル

 昨年夏ごろ為替レートは対ドル110円前後だったが、徐々に円安が進み今年に入ると114〜118円。3月28日には6年7か月ぶりの125円台にまで急落した。メディアも「悪い円安」と問題にしている。





 「円安」とは何か。対ドル110円が125円になったとは、円が高くなったのではない。1ドルを買うのに110円必要だったものが125円かかる。約14%も上乗せしなければ1ドルを買えないということだ。円の価値が下がり、円が安くなったので円安という。

 これまで円安は特に輸出大企業に歓迎されてきた。たとえばトヨタ自動車は、為替レートが1円の円安となれば、対ドルで400億円利益が増えるといわれた。自民党政権、とりわけアベノミクスは、量的金融緩和・超低金利政策などで円安に誘導して輸出企業に恩恵を与えてきた。

 ところが、125円となった円安について、財界トップの一人、桜田謙悟経済同友会代表幹事が「為替は現在の水準が適切だとはとても思えない」(3/28朝日)と言い始めた。「悪い円安」として警戒しているのだ。

 円安が進めば、輸入品の価格がさらに上がる。急激な円安になると、「企業努力」ではこれまでの価格を維持できず、販売価格を引き上げざるをえなくなる。物価が上昇すると、家計の負担が増える。賃金など収入がまったく増えていない日本の状況では負担を抑えるため消費が縮む。これは売り上げ減につながり、企業業績も悪化。業績悪化は、ただでさえ賃金引き上げを拒んできた資本に口実を与え賃上げを一層困難にする。

 円安―物価高―消費低迷と負のサイクルに陥り国内市場がさらに縮小していく。

経済制裁の被害は民衆に

 だが、グローバル資本は急激な円安にも対応できる状態にある。有力な製造業は2000年代以降、生産拠点を海外に移転している。そのため為替変動にそれほど左右されず、円安に頼らなくても儲けが出るようにしている。

 一方、市民は物価高による生活破壊に直面する。原油高が続いており、原油を輸入せざるをえない日本では、円安による価格上昇の影響を庶民が強く受ける。ウクライナ戦争が拍車をかけている。ロシアとウクライナは、ともにエネルギーや資源、穀物の輸出大国だ。ロシアとウクライナからの輸入が減少すれば、今後もさらなる物価上昇は必至だ。

 ロシアへの経済制裁は世界の民衆の生活を直撃している。IMF(国際通貨基金)も「最も貧しく弱い人たちが打撃を受ける」(3/24朝日)と認める。南米ペルーでは、燃料・食料価格の暴騰に市民の怒りが爆発、4月には連日の大規模デモとなり、抗議は世界各地に広がっている。日本も事態は変わらない。各国政府は軍事援助や経済制裁でなく、停戦と平和交渉実現にこそ全力を尽くすべきだ。

 岸田政権は、円安も市民生活の悪化も放置している。物価高への緊急の対策と生活保障を求め、政策転換を迫らなければならない。

 最優先すべきは収入を増やすことだ。最低賃金1500円をはじめ賃上げや年金引き上げ、また、賃上げを広く進めるために中小企業への援助、さらには消費税減税が必要である。
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