2022年04月22日 1720号

【未来への責任(346)大法院判決履行への闘いはこれからだ】

 3月9日に行われた韓国大統領選は、保守系野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソギョル)氏がわずか0・73ポイント差で辛勝し、5年ぶりの政権交代となった。

 文在寅(ムンジェイン)前大統領は、どんな社会背景の下で生まれたものであったか。2013年7月10日にソウル高等法院は新日鉄住金(当時)に対して原告1人当たり1億ウォンの損害賠償を命じる画期的な判決を下した。新日鉄住金は不服として大法院に上告したが、いつまでたっても判決が出ない。朴槿恵(パククネ)政権(当時)と大法院幹部が審理を止めていた不正を明らかにしたのが、キャンドル革命で誕生した文大統領だった。

 そして、ようやく2018年10月30日の大法院判決で勝訴が確定した。1990年代から日本で開始された強制労働被害者の闘いは、「日韓請求権協定で解決済み」という壁をついに突き崩すこととなった。文政権を生み出した民主化運動の成果であり、その功績は少しも色あせることはない。

 3月22日、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」は大統領選の結果を受けて、院内集会を開催した。集会では、「韓国大統領選の結果と今後の日韓関係の見通し」について李泳采(イヨンチェ)恵泉女学園大学教授が報告した。

 李さんは、与党が敗北した理由として「文政権の下での経済政策、不動産政策の失敗、民主化闘争世代の“既得権益層”化への反発、等がある。これにより青年層の支持を失った」と指摘。一方で「20代、30代の若者、とりわけ女性が李在明(イジェミョン)候補を支持した。20代の47・8%が李候補に投票し、尹候補の得票率45・5%を上回った。特に女性は58・0%が李支持。30代でも両候補の得票は拮抗(きっこう)した。女性がこのような投票行動に出たのは、尹候補が『女性家族部』廃止などジェンダー平等推進に背を向ける政策を打ち出したからだ。民主党は敗北したが、希望を未来につなぐことはできた」と分析した。実際、大統領選後に女性の民主党への大量入党が続いていると報道されている。

 尹大統領は、対日関係では徴用工問題、貿易規制など懸案事項の「グランドバーゲン(一括処理)」を提起している。膠着(こうちゃく)状態となっている日韓関係が動く可能性はある。

 しかし、大法院判決をなかったことにはできない。日本製鉄に大法院判決の履行を求める私たちの立場はいささかも揺るがない。闘いはこれからだ。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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