2022年04月22日 1720号

【映画をより理解するために/「難民鎖国ニッポン」の現実】

 2016年5月の伊勢志摩サミットでは「迫害から逃れる個人は、最初に入国した安全な国において、効果的な保護を与えられるべき」との首脳宣言が発表された。この宣言を議長国を務めた日本が無視していることは、映画『牛久』を見てのとおりである。

 そもそも日本は難民申請者にきわめて冷たい国だ。難民支援協会がまとめた2020年の難民認定件数でドイツが約6万3千件、カナダが約2万件にのぼる一方、日本は47件にとどまる。難民条約加入による国内法の整備が行われた1982年から2020年の累計でも、難民認定者は841人しかいない。

 なぜか。政府の政治的な裁量によって、難民条約上の難民の解釈を不当に狭く解釈しているからだ。映画に登場する被収容者は「日本は難民を認めない。ただ申請書を配っているだけ」と批判する。

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 日本は、在留資格がない外国人を原則として収容する「全件収容主義」をとる。退去強制処分を受けると、送還されるまで原則無期限で入管施設に収容される。「病気その他やむを得ない事情」で仮放免が認められても、就労することはできないし、医療保険などの行政サービスも受けられない。生きるための権利を奪われた状態は収容中と変わりないということだ。

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 岸田文雄首相は「ウクライナの人びととの連帯を示す」と強調し、“避難民”の受け入れを決めた。しかし「特例的な支援策」を他の国の難民に広げることには慎重な考えを示している。アジア、中東、アフリカからの難民申請者には門扉を固く閉ざしたままだ 政府専用機を使った避難民輸送(たった20人!)などは、国際世論を意識したパフォーマンスにすぎない。
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