2022年04月29日 1721号

【ミリタリー 戦争犯罪を止める即時停戦を 国ではなく市民の命を守れ】

 ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻から間もなく2か月となる。プーチン政権によるこの侵略戦争は、懸念されたとおり双方の軍隊―兵士にとどまらず、ウクライナ市民を巻き込んでおびただしい数の死傷者を日々生み出している。

 独立した国際機関による客観的な調査が必要だが、「戦争犯罪」と疑われる事件がロシア軍側を中心に数多く存在していると報道されている。病院などへの攻撃は明らかに戦争犯罪にあたる。だが、市街地でミサイルが飛び交う現代の戦争では、そうした戦争犯罪行為を避けることはできない。

 今回のロシア軍による攻撃が「専制国家」による「特別に残虐な軍事作戦だ」と語られることが多いが、事実ではない。そもそも「軍事施設だけをピンポイントで攻撃する」ことなどできない。また、「ピンポイント攻撃」には超高額の精密誘導弾などが必要とされるが、敵の軍事能力を奪うためには、無差別攻撃が最も手っ取り早く、安上がりというのが実態だ。

 無差別攻撃は紛れもなく戦争犯罪だ。同時に忘れてはならないのは、アフガニスタンで、イラクで、米軍が繰り返し行った無差別攻撃も明確な戦争犯罪だったことである。このような戦争犯罪行為は、今回に限らず過去においても国際刑事裁判所 (ICC)などによって、責任者の処罰が実施されなければならない。

 「ロシアはICCに加盟していないので、プーチンを逮捕、処罰することは難しい」と政府系の研究員らがもっともらしく解説しているが、決して語らないのは、ICCにはロシアだけでなくアメリカも中国も加盟していないことだ。それは、大国の軍事力行使が、必ず戦争犯罪行為を伴うことを知っているからだ。

 現代の戦争は、戦闘員(兵士)と非戦闘員(民間人)の区別なく甚大な被害をもたらす。

武器はいらない 交渉を

 歴史的に見れば、第2次世界大戦で兵士と民間人の死者がほぼ半々だったのが、朝鮮戦争では兵士15%民間人85%と完全に逆転。ベトナム戦争に至っては兵士5%に対して民間人95%であった。今日、大国の軍事介入は、必然的に兵士ではない市民(民間人)の犠牲を大量に生み出すのである。

 直ちに戦争犯罪をやめさせなければならない。そのために即時無条件の停戦が必要だ。守らなければならないのは、国ではなく、市民の命である。

 キエフ在住のウクライナ人平和活動家ユーリー・シェリアジェンコさんは「私たちに必要なのは、さらなる武器やさらなる制裁、ロシアや中国に対するさらなる憎悪による紛争の激化ではなく、もちろんその代わりに、包括的な和平交渉が必要なのです」と語っている。この声にこたえる国際的行動を!

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS