2022年05月06日 1722号

【米アマゾンで初の労組結成 労働者自身が組織化し歴史的勝利 米国労働運動に地殻変動】

 4月1日、ニューヨーク州スタテン島のアマゾン配送センターでの労働者代表選挙で、アマゾン労働組合(ALU)が歴史的勝利を収め、アマゾンの中に初めて団体交渉権を持った労働組合が誕生することとなった。有権者8325人のうち、ALU賛成2654票に対し反対2131票という大差での勝利だった。

 今回の勝利は、当事者以外誰も予想しなかった勝利であり、全米や世界に大きな衝撃を与えた。

 アメリカで労働組合が団体交渉権を獲得するには、職場の30%以上の労働者の署名を集めて全国労働関係局(NLRB)に投票の申し立てを行い、全労働者による投票で投票数の過半数を獲得しなければならない。その勝利で初めて職場を代表する排他的団体交渉権を獲得する。

莫大な利益はべゾスに

 アマゾンは全米で110万人の労働者を雇用し(2/28日経)、小売り大手ウォルマートに次ぐ米国第2の雇用者≠ニ言われる。1秒単位で労働を管理する過酷な労働が強いられている。離職率は極めて高い。米アマゾンは、2021年6月までの1年間で、売り上げを40兆円から62兆円に増やすなど、コロナ禍の下で業績を飛躍的に拡大した。創業者ジェフ・ベゾスは、1年で資産を約7兆円増やし、19兆4400億円にした。一方、その利益はエッセンシャルワークを担った労働者に分配されていない。

 アマゾンは、「ユニオンバスター」(組合活動妨害のための労務コンサルタント)に年間4億円以上も支出して反組合政策を実施している。今回の投票でも、反組合ポスターを職場に張り巡らし、スマホにメッセージを送りつけ、労働者に反組合会議への参加を強制して徹底的に妨害した。

 2021年のアラバマ州ベッセマーの倉庫での投票では、この妨害が効を奏し、小売・卸売・百貨店組合(RWDSU)が組織した投票では労組が敗北した。

 勝利したALUは、驚くことに、どこのナショナル・センターにも属さず、上部団体も持たない独立組合で、その歴史は2年未満である。アマゾンで働いていたクリス・スモールズは2020年3月、会社が新型コロナ感染から労働者の安全を守っていないとして、10日間の操業中止を提唱し、職場放棄を組織した。アマゾンは彼を解雇。スモールズは、組合結成の準備を4人から開始し、20人の中核メンバー、100人の組織化メンバー(平均年齢26歳)を組織し、フルに活動して今回の勝利を実現した。

 組織化活動は「労働者自身が労働者を組織する」手法を取った。バスの停留所で何か月も焚き火をしたり食品を配ったり、交代制勤務の労働者と話し込む。職場のリーダーを分析し、勤務時間外も休憩室に入り込み、食べ物を配るなどしながら労働者と話し込んで組織していった。アマゾン社は労働組合を外部の「第三者」と描こうとしたが、失敗した。

全国組織化の展望

 アマゾンの施設はニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどの大都市圏に集中しており、今回の勝利でさらなる組織化の道が開かれることになった。ALUの成功を全国に広げていくために、チームスターズ(全米トラック運転手組合、130万人)も全面的に協力することを申し出ている。

 パンデミックによる生活苦と異常なまでの貧富の差の拡大、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)をはじめ社会主義運動の飛躍的な成長は、米国労働者の意識を大きく変化させている。今、アメリカで労働運動発展を可能とする大きな地殻変動が始まった。日本から連帯するとともに、日本の労働運動を変革していかなければならない。

 
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