2022年05月06日 1722号

【明日をつくるなかまユニオン<第6回>/低賃金労働を乗り越えるために、社会的支えを機能させよう/ワツコ争議支援する会が第2回総会を開催】

 試用期間中にケガをした社員を2019年9月に一方的に解雇したワツコ株式会社。不当な試用期間解雇の撤回を求める「支援する会」の総会が3月12日、開かれた。同会のメンバーから報告を寄せてもらった。

ワツコ(株)は誠実な団体交渉を行い、問題解決を

 ワツコ(株)の団体交渉拒否が、今年1月に大阪府労働委員会から不当労働行為と認定されたことにより、会社は大阪府の入札参加資格停止措置を受けました。

 それでもワツコ(株)は、簡単には団体交渉に応じず、開催にこぎつけたのは3月2日でした。しかもその団交の場で、なかまユニオン執行委員長が着席していないにもかかわらず、会社側代理人が一方的に団交を開始しようとしました。府労委から命じられていた、不当労働行為を繰り返さない旨を誓約する文書の手交も、他の書類に紛れ込ませるようにして、その代理人が配布。不当労働行為への謝罪の一言もなく、出席していた会社役員2人は全く発言しませんでした。

 そのため、3月11日と24日に、抗議と改めての団交を申し入れる社前行動に取り組みました。

 このような状況の中で3月12日、「ワツコ(株)の試用期間解雇撤回の闘いを支援し、若者が人らしく働ける社会をめざす会」の第2回総会を、竹信三恵子さん(和光大学名誉教授・ジャーナリスト)を迎えて開催。試用期間不当解雇撤回を広く訴える宣伝行動や、若者の労働環境の改善をめざすシンポジウムの開催等の方針を確認しました。

 試用期間解雇されたAさんは、労災申請の意思表示を会社に行った途端に解雇通知が届いた経緯や団交をめぐる会社の対応に触れ、「許せない。勝利するまで闘う」と力強く決意表明。また、この闘いを広げることで、同じように理不尽な扱いを受けている若い人たちに労働環境の問題を考えてもらえる機会を作っていきたいと訴えました。

 また、東リ(株)の偽装請負と闘うL.I.A労組、不当弾圧と闘う関西生コン支部の仲間から、連帯のあいさつを受けました。

 竹信さんの講演で、ワツコ争議を広げ、勝利し、その成果を広く周知していく大切さを改めて感じました。

 その後4月6日にも団交を行いましたが、いまだ謝罪も「誓約書」の手交もありません。解雇撤回に向け、今後とも皆さんのご支援をよろしくお願いします。

(なかまユニオン京都支部・小山敏夫)


竹信三恵子さんの講演から 声を上げられる社会であるために

 竹信さんの講演「若者の労働環境はなぜ悪化したのか〜人らしく働き続けるために」では、次のようなお話を聞きました。

▽試用期間は「自由に解雇してよいお試し期間」ではない。働く側が弱い立場に置かれる状況だからこそ、「試用期間」でも最初から労働権はあるという認識を広めることが重要。

▽就職してもすぐに失職し、また就職するという雇用を「回転ドア型」と呼ぶが、見えない失業率=窮迫的「半雇用」型労働で就労をつなぐもの。現在、非正規労働は全労働者の4割近く。若者の貧困率が高くなっている。そこにパワハラやセクハラも介在している。

▽「新自由主義」の下、弱者を守るのではなく、強者が勝つ仕組みがはびこっている。そのような社会で生きてきた“今どきの若者”は、自己責任社会や新保守主義しか知らないから、声を上げられない。

▽乗り越えるために大事なのは、相談窓口や労働組合など社会的支えが機能すること。労働組合と市民運動が手を携えていくことが、社会の底上げになる。

 “今どきの若者”が「長時間労働がいけないというが、ゆとり世代ですぐに会社を辞めてしまったりする根性のない若い社員にも問題がある」「労使交渉? 賃金は会社が決めるものでしょ」「労働組合って悪い人たちなんですよね」と感じているとの報告には驚きましたが、労働法を学んだ学生は「守ってくれるものがあると知ってホッとした」と語ったそうです。

 大変な状況の中、孤立させられている人びとが「助けて」と声を上げられる社会であるためにも、労働組合の役割は大きいなあと、改めて思いました。

(ワツコ争議支援する会・石田隆子)

 
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