2022年05月06日 1722号

【国の規制権限不行使を糾弾 最高裁で群馬訴訟弁論 原発避難者集団裁判】

 福島原発事故の国の責任を問う避難者集団訴訟の最高裁弁論は、千葉訴訟に続き群馬訴訟が4月22日、生業訴訟が25日に行われた。

 群馬訴訟は最高裁に上がった4つの中で唯一国の責任が否定されたケース。最高裁前には、100人を超える支援者が傍聴券を求めて列をつくった。

 法廷で意見陳述に立ったのは、いわき市から夫妻で避難した丹治(たんじ)杉江さん。「原発を運転するのにはすべて国の許可や監督が必要。レベル7の重大過酷事故を起こして、国は責任を逃れるなんて絶対に許せない」と怒る。先の最高裁判決で確定した東電からの賠償額は25万円という。「同じ避難者でも私たちはわずかな賠償金しか受け取っていない」と区域外避難者の実情を述べ、「額の問題だけではなく、将来世代の安全のために国の責任を明確にしていただきたい」と訴えた。

 関夕三郎弁護団事務局長は、国の規制権限不行使の違法性を指摘した。原子力基本法の「安全の確保」(第2条)を基に、原発設置の際の、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」で公共の安全の確保を目的とした各種規制を定めている。運転の際は電気事業法で、経産大臣に技術基準適合命令を発令する権限を与えた。

 関弁護士は「電気事業法による技術基準を定める省令4条1項で、津波などにより損傷を受ける恐れがある場合は、防護施設の設置、基礎地盤の改良その他適切な措置を講じなければならないと定められている。また原子力災害の深刻さを考慮して、安全設計審査指針2では『自然現象のうち最も過酷と考えられる条件…を考慮した設計であること』と、万が一にも起こらないようにするための規制である。伊方原発訴訟最高裁判決でもその旨を判示している」と、国の高度の注意義務放棄を厳しく批判した。

 報告集会で原発事故全国弁護団連絡会・代表世話人の米倉勉弁護士は「最高裁で中間答申を上回る損害額が確定されたのを機に、原子力損害賠償紛争審査会の指針を見直せという提言をまとめて国に提出したい」とあいさつした。

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 25日には、原告3500人を超える生業(なりわい)訴訟の弁論。最高裁前では約200人の支援者が「公正な判決、国の責任を明確に」とアピールした。最高裁第2小法廷・菅野博之裁判長は7月退官予定で、統一判断は5月16日の愛媛訴訟弁論後の6月にも出される可能性がある。全国30件以上の集団訴訟は正念場を迎える。



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