2022年05月13・20日 1723号

【2年ぶり開催「ノーモア尼崎事故集会」/安全確保と再国有化を誓う】

 乗客・運転士107名が死亡したほか、後追い自殺者などの二次被害者も出したJR尼崎事故から17年。コロナ禍で昨年は中止された「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会」が兵庫県尼崎市で2年ぶりに開催。80人が参加した。

合理化と安全軽視

 JR西日本労働者を代表して、国労近畿地本執行委員の東幹男さんが「コロナ禍で加速する駅の効率化・縮小」と題し、記念講演を行った。コロナ禍を口実にJR西日本が駅窓口の営業時間短縮、人員削減などの合理化・サービスダウンを次々と打ち出している実態を明らかにした。

 これらはセルフ化による交通弱者の切り捨てだ。JR西日本が導入を狙う「みどりの券売機ぷらす」は、コールセンター職員が利用客と券売機越しに通話しながら発券する。JR東日本が同種のものとして約20年前に設置した「もしもし券売機kaeruくん」はすでに撤廃されている。

 東さんは尼崎事故当時の「稼ぐ」から現在は「削る」へ会社の営業方針が変化したと指摘。JR西日本最多の利用者を誇る大阪駅でさえ5・6・7・8番ホームが無人化される危険な事態が進行している。

 安全問題研究会の地脇聖孝代表は「限界に来た民営JR7社体制と再国有化の展望」と題して報告。同研究会がJR再国有化のため昨年1月に作成、公表した日本鉄道公団法案の概要を説明し、再国有化の必要性を訴えた。「意味のある交通政策とするためには、路線の新設・改廃などの重要事項の決定に利用者・市民の意向を反映させることが必要」として、再国有化後の新事業体に意思決定機関「管理委員会」を置き、委員を有権者による選挙で選出するとしたところに同法案の最大の特徴がある。

 長女・容子さん(当時21歳)を尼崎事故で亡くした奥村恒夫さんは、事故を継承するため事故車両の保存を訴えてきたが、消極的な企業体質は事故前から変わっていないとしてJR西日本の姿勢を批判した。

 なかまユニオンの三ツ林安治さんは、民営化された大阪メトロでの2割もの大幅な要員削減問題を指摘する。JR西日本と大阪メトロに共通するのは、労働組合が安全問題で交渉を申し入れても会社側が「労働条件に関する労使交渉には応じるが、一般利用客の安全問題での交渉には応じない」としていることだ。

 公共交通労働者と利用者の連帯を阻むためなら利用者の安全を犠牲にしてもかまわないという会社の姿勢は反社会的であり決して許されない。

安全求める闘い

 この他、全日建連帯関生支部・福島聡さん、JAL争議団・神瀬(こうのせ)麻里子さんから闘いの報告があった。2010年末にJAL操縦士・客室乗務員165名が解雇された争議は、これまで被解雇者が各社内労組所属のまま原職復帰を求めてきたが、新たにJAL被解雇者労働組合(JHU)を組織して、都労働委員会闘争に踏み出している。

 尼崎事故で重傷を負った岸本良太さんは、後に心身の不調を苦に自死。良太さんを思い続けた母親・早苗さんも昨年、77歳で逝去。その早苗さんが作った歌詞を元に作曲された『さくらの涙』を会場全員で合唱し、安全を誓い合った。

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