2022年05月13・20日 1723号

【「沖縄ジュゴン保護」で対政府交渉/「絶滅」論文の執筆者を重用/防衛省の責任を追及】

 政府・国土交通省は沖縄県に、5月16日までに設計変更不承認処分を是正することを指示しました。今後、県は国地方係争処理委員会、高等裁判所での闘いへと進みます。だから、9月沖縄知事選挙、名護市議選挙は重要な闘いとなります。

焼き直しを再投稿

 辺野古新基地の設計変更不承認処分の主な理由は、「軟弱地盤」と「ジュゴンへの影響についての調査不足」です。私たちはジュゴンの行方不明について、沖縄防衛局と環境監視等委員会の責任を追及してきました。「沖縄ジュゴンの絶滅」論文を昨年4月英国科学雑誌に投稿した環境監視等委員3人の解任を求め、11月に署名3万3589筆を提出しました。

 今年4月に当該の3人が「絶滅」論文の修正版を投稿しました。前述の英科学雑誌の編集部から「大幅な訂正」を昨年7月に要求されたからです。その背景には、IUCN(国際自然保護連合)専門家グループ(共同議長 ヘレン・マーシュ博士)が「信頼に値しない論文」と厳しく批判したことがあります。SDCCも批判の意見を同雑誌に投稿しました。

 修正版といっても、前回の焼き直しにすぎません。前回の標題「沖縄島付近で孤立したジュゴンの絶滅」に「〜への軌跡」を付け加えてごまかしていますが、「絶滅」がちりばめられた内容です。しかも、ジュゴンの生息地で基地建設が行われている事実を書かずに、「海外からジュゴンを移入すればよい」とまで主張しているのです。

「逃げの一手」を批判

 防衛省は「個人の論文で環境監視等委員会と無関係」と逃げの一手。「絶滅」論文の執筆者3人が参加する環境監視等委員会の役割が「ジュゴンなどの保護対策の実施」(承認書の留意事項)であることに知らんふりです。国際的な批判がある「沖縄ジュゴンの絶滅」論文の執筆者3人を「なぜ環境監視等委員会に重用しているのかを説明する責任がある」との追及には沈黙。しかし、「防衛省は沖縄ジュゴンが絶滅したとの立場ではない」と明言しました。

再質問の回答を要求

 環境省交渉では、3年間のジュゴンの広域調査で、先島諸島での食(は)み跡の発見や、ジュゴンの目視が報告されました。私たちは、その分析と評価をふまえて、ジュゴンの保護策を検討するよう求めました。ジュゴンの餌場、海草(うみくさ)藻場の保全のためにも、海洋保護区を作るべき時です。環境省側は「沖縄ジュゴンの絶滅論には同意しない」「ジュゴンを海外から移入することにも同意しない」と断言。「種の絶滅を判断する手続き」については、次回までに回答すると約束しました。

 交渉で積み残した回答は、伊波洋一参院議員事務所を通じて防衛省、環境省に引き続き求めています。

(ジュゴン保護キャンペーンセンター〈SDCC〉共同代表・蜷川義章)

 
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