2022年05月27日 1724号

【戦争とジェンダーは両立しない/山本よし子/茨木市議会議員/OPEN(平和と平等を拓く女たちの絆)代表】

 ウクライナ戦争が続いている。戦争による死者、負傷者は兵士ばかりではない。犠牲になるのは女性、子ども、高齢者などの非戦闘員も同じだ。ロシア軍による無差別攻撃、避難民に対する非人道的な扱いが「戦争犯罪」として報道されている。国連はロシア軍による女性と子どもへの性的暴力についての調査を始めた。

 一方、ウクライナ軍に関する報道の中で特徴的なのが、女性兵士の姿である。ウクライナ軍には、軍全体の15%にあたる3万人の女性が所属しているという。「祖国のためにたたかう勇敢な女性」と取り上げられているが、女性が戦場でたたかうことは、男性兵士以上に厳しい状況に置かれることになる。

 かつて旧ソ連では、多くの女性兵士が前線で戦闘行為に参加した。スヴェトラーナ・アレクイエーヴッチ著の『戦争は女の顔をしていない』には、従軍した女性たちの体験が綴られている。第二次世界大戦では、15歳から30歳までの女性百万人が従軍した。戦後は、男性のように「英雄」視されることもなく、むしろ逆に侮辱され、戦地での経験を隠して生きている女性たちも多いと言われている。

 現在の米軍でも、現役兵士の19%が女性である。軍隊の非人間的な性格は「敵」への残虐行為だけでなく、自軍の兵士に対しても差別や暴力をもたらす。米軍では退役した女性兵士の3割が男性兵士から性的暴力を受けたとの報告もある。

 戦争は女性たちを繰り返し苦しめてきたのであり、戦争のなかでジェンダー平等はあり得ない。

「慰安婦」は未解決

 戦時下での女性に対する暴力は、国際人道法の視点から「戦争犯罪」として断罪されなければならない。旧日本軍による性奴隷制である「慰安婦」問題もまだ解決してはいない。いまだに日本政府は「慰安婦」への軍の関与を否定し続けている。

 岸田首相は最近、ドイツのショルツ首相にベルリンに設置されている日本軍の戦時性暴力を象徴する「平和の少女像」の撤去を要請するという暴挙にまで出ている。ウクライナでの戦闘が続いている今だからこそ、「慰安婦」問題をなかったことにする「歴史修正」を許さない運動を広げていこう。

「フェミ科研費裁判」で私たちは何を問うたのか― オンライン集会 6月2日(木)18時30分〜

 「慰安婦」問題の研究に対して、杉田水脈(みお)自民党衆院議員は「研究は捏造(ねつぞう)」と誹謗中傷し、研究費の助成に反対した。これに研究者たちが名誉棄損だと訴えた「フェミニズムバッシングを許さない裁判」が5月26日に判決を迎える。集会では判決の評価とともに、原告から裁判の意義が改めて訴えられる。是非参加を。

◇主催 おんな・子どもをなめんなよの会
◇申し込み先  OPEN(平和と平等を拓く女たちの絆) uih42927@nifty.com 080-3113-2304 (山本)
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