2022年05月27日 1724号

【時代はいま社会主義へ/第19回/国家と革命(1)/―国家は搾取階級の支配のための組織】

 今回から連載で紹介していくのは、ロシア共産党(ボリシェビキ)の指導者であったレーニンの著書『国家と革命』である。本書は、ボリシェビキによる1917年4月の武装蜂起が失敗に終わったあと、同年11月にボリシェビキによって社会主義新政府が樹立される前までの期間(1917年8月〜9月)に書かれた。レーニンは本書により、第1次世界大戦において自国政府支持の立場をとった社会主義者たちの抱いている国家観の歪(ゆが)みを批判し、マルクス主義の国家論を歪曲(わいきょく)から防衛しようと試みたのだった。

 本書は、マルクスとエンゲルスが国家について述べた文章をレーニンが解説するという体裁をとっている。したがって本書は、現代の読者がマルクス主義国家論の基本線を理解するうえで格好の著作ともなっている。現代の資本主義国家は、外交、軍隊、警察、徴税といった近代国家の基本的な機能だけでなく、産業政策、社会保障、教育行政といった多様な分野の活動を網羅するにいたった。そのため、国家それ自体の本質はかえって見えにくくなっている。国家は今日では、もっぱら人びとの共通利益(公益)を代表し実現してくれる公平な機関であるかのようにみなされがちである。それだけに、マルクス主義の階級国家論を今こそ学ぶ必要があるのだ。

 レーニンは『国家と革命』の第1章で、エンゲルスによる以下の2つの文章を引用している。

 (1) 「相互に対立し、経済的利害を異にする階級どうしが不毛の闘いをくり広げるなら、双方の側と社会は崩壊してしまう。そうしたことを防ぐためには、外見上社会を超越しているように見える権力、すなわち、階級対立を和らげ、それを『秩序』の範囲内に押しとどめてくれる権力が必要になった。そして、社会のなかから発生するにもかかわらず、社会の上に君臨し、社会からとめどなく疎遠になっていくこの権力こそが、国家なのである」(20ページ)

 (2)「国家は要するに搾取階級の組織であって、その目的は、周囲を取り巻く生産条件を維持すること、とくに、所与の生産様式によって規定される抑圧的環境(奴隷制、農奴制、賃労働)のなかで、搾取される階級を暴力で抑えつけることにあった。国家は社会全体を公式に代表するものであり、社会を、目に見える団体として具現するものであった。しかし、そのようなものであるとしても、国家はあくまでも、その時代ごとに社会全体を単独で代表する階級のものであった。すなわち、古代の国家は、奴隷所有者である市民の国家であり、中世の国家は封建領主の国家であった。そして現代では、国家はブルジョアジーの国家である」

 上の引用文(1)によれば、国家は、社会のなかに階級の分裂が、すなわち支配する階級と支配される階級が発生し、後者による反乱や外敵からの攻撃に対して前者の支配を維持しなければならなくなった時代に発生する。国家はすでに、ギリシャやローマといった古代の奴隷制社会において形成されていたのである。

 そして上の引用文(2)では、国家は階級支配のための機関であるにもかかわらず、「社会全体」を代表する「公的な」性格をも帯びることが指摘されている。より正確に言えば、国家は「公的な」性格をまとうことによって初めて、階級支配のより堅固な機関として機能することができるのである。次回はこの点を説明しよう。(続く)
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