2022年05月27日 1724号

【読書室/南西諸島を自衛隊ミサイル基地化 対中国、日米共同作戦計画/土岐直彦著 かもがわ出版 1600円(税込1760円)/軍事化に抗う地元住民】

 沖縄の「復帰50年」にあたり、大手メディアがスルーした現在進行形の問題がある。南西諸島の軍事要塞化だ。「台湾有事」を口実に、種子島(馬毛島〈まげしま〉)、宮古島、石垣島に自衛隊のミサイル基地がつくられているのである。この事実が沖縄以外の市民にほとんど知られていないことに筆者は警鐘を鳴らす。

 平時においても基地被害を強いられている沖縄が有事に直面するとどうなるか。臨時軍事拠点が置かれる可能性があり、そうなると沖縄全体が攻撃目標になることは明らかだ。それが分かっているにもかかわらず、日本政府は南西諸島の軍事要塞化を強めている。「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水事務局長は、「米軍の対中軍事戦略と、沖縄への日本の差別が重なった(一致した)状況だ」と指摘する。

 一方、内閣府の調査(2001年)によれば、沖縄でも自衛隊を好意的に受け入れる人が70%を超えている事実がある。これは、地元で受け入れてもらうための懐柔策が長年にわたって行われてきたからだ。

 この状況下にあって、反対運動は粘り強く行われている。本書で特筆されるのは、こうした軍事化に抗う地元住民の闘いの現地ルポである。5月28日〜6月5日にかけて行われるZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)のスピーキングツアーで発信される南西諸島各島の闘いの実相が紹介されている。

 市民の運動とともに、本書後半では「軍隊化進む自衛隊」「台湾有事と日米軍事一体化」「日米軍事作戦@オキナワ」がまとめられ、改めて現地の反基地闘争との連帯の基本視点を確認することができる。 (I)
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