2022年06月03日 1725号

【ミリタリーウォッチング/「敵基地反撃」を「反撃」に変更/政府判断で「敵司令部攻撃」も】

 自民党安全保障調査会(会長小野寺五典元防衛相)は4月21日、敵のミサイル発射拠点を狙い撃つ「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と呼び変えることなどを政府に求める提言をまとめた。これは、「敵基地攻撃」という文言を省き、攻撃対象をミサイル基地だけでなく命令機能にまで拡大することを意図しており、「防衛」政策の転換を迫る内容となっている。

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 提言では「我が国を取り巻く安全保障環境は加速度的に厳しさを増し」と中国、ロシア、「北朝鮮」の脅威をあげ、特に中国には「迎撃のみでは我が国を防衛しきれない重大な脅威」だと主張している。2020年のイージス・アショア「断念」の背景には、このような政府・自民党の思惑が強く渦巻いていたと言える。

 「反撃能力」は、敵の第一撃を受けることを想定していない。小野寺は「相手側の攻撃が明確に意図があって既に着手している状況」であれば、反撃の判断は「政府が行う」と説明。つまり敵が攻撃に着手したと政府が認定さえすれば、攻撃が可能というわけだ。

 しかし、一体何をもって日本に対する攻撃に着手したと言えるのか。ここはきわめて不明瞭だ。また日本の防衛戦略の基本方針とされた「専守防衛」は、相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使するものとの建前で、反撃程度も装備も必要最小限にとどめることになっている。まして、日本国憲法9条が「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」とうたっていることに真っ向から違反する。

 さらに、攻撃対象にしても、「敵基地攻撃」が想定していたミサイル発射拠点だけでなく、「指揮統制機能等も含む」とまで拡大する。

維新 改憲に意欲

 憲法9条違反の提案は、維新も同じだ。日本維新の会は5月18日、自衛隊を憲法に明記する9条改定案を公表し、19日の衆院憲法審査会で提案。参院選の党公約にも盛り込んで争点の一つにする考えだ。改定案では、現行の9条を残したまま「9条の2」を新設。「前条の範囲内で、法律の定めるところにより、行政各部の一として、自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する」と明記する。9条への追加について、藤田文武幹事長は18日の会見で、「ウクライナ危機の中、避けて通れない問題だ」「自衛隊を違憲とする政党や有識者がおり、そうした主張の根拠を解消する」と強調している。

 私たちは、このような戦争に向かう政党や政府の存在こそ許さない社会をつくっていかねばならない。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会
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