2022年06月10日 1726号

【コラム見・聞・感/細田衆院議長セクハラに見る原発推進派の人権感覚】

 女性記者を深夜に自宅に呼び出す、プライベートに関することを執拗に聞くなど、細田博之衆院議長のセクハラ女性蔑視言動が次々と週刊誌で暴露されている。

 大手メディアは全く報じないが、この細田は2013年7月に出演したBSフジの番組では「原子力発電を推進しようって、みんな世界中が言っているんですよ」と発言している人物だ。

 外務省データによると2015年現在、世界には196の国がある。一方、原発運転国は世界でわずか31。世界の国々が「ガチャ」だとしたら、原発運転国を引き当てる確率はサイコロより低い。これのどこが世界中なのか。

 もっとも、原子力ムラのプロパガンダ団体「日本原子力文化財団」が運営しているサイト「エネ百科」でも「世界中で利用されている原子力発電」などと言っている。自分たちに都合が悪いデータが出てくると隠蔽・改ざん・ねつ造・はぐらかしを繰り返してきた原子力ムラのこと。原発のない国を世界地図から消し、6分の1にも満たない原発保有国を「世界中」のように見せる工作くらい朝飯前だろう。

 「もちろん福島の不幸はあったけれども、それで全部やめてしまおうという議論を前提にやることは、やっぱりとても耐え難い苦痛を将来の日本国民に与えると逆に思いますね」と細田の暴言は続く。原発事故で福島県民が受けた類例のないほどの「耐え難い苦痛」は、甲状腺がん裁判に見られるように今も続く。だが、細田は原発事故の被害より、原発廃止のほうが耐え難い苦痛だというのだ。

 こうした常識離れの発言を繰り返すのも、細田が自民党の原発推進派議連「電力安定供給推進議員連盟」会長を長年務めているからだ。事故後、多くの原発が安全基準を満たせず止まったままなのに「安定供給」とは、冗談も休み休みにしてほしい。

 事故のあった福島、細田の地元・島根をはじめ原発立地県の青森、新潟、石川、福井、愛媛、佐賀、鹿児島は県議会での女性議員が1割未満。そこに日本の原発の4分の3が集中する。原発推進とジェンダー平等の遅れは見事に対応している。細田の言動は日本社会の象徴でもある。

 「女がいると会議が長い」と発言した森喜朗も石川県出身だが、五輪組織委員会会長を追われた。時代は確実に変わっている。細田も同じ運命をたどるだろう。(水樹平和) 
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