2022年06月10日 1726号

【みるよむ(623) 2022年5月21日配信 イラク平和テレビ局in Japan代表 石油産出国で石油燃料が手に入らない イラク・ニナワ州住民の怒り】

 世界的産油国のイラクで、必要な石油燃料が手に入らない問題が深刻化している。2022年3月、サナテレビは北部ニナワ州の市民の訴えを取材した。

 イラクのニナワ州では、ガソリンスタンドでの給油のために長時間並ばなければならない。順番待ちの車の列は何`なのかわからないほどだ。自動車や家庭用発電機の燃料を確保するために丸一日を費やすという。

 怒ったニナワ州の市民は、イラク石油生産会社の社前で抗議の座り込みを組織した。市民は、石油生産量が数年前に1日当たり100万バレル程度であっても危機的事態にはならなかったが、「現在の生産量は350万バレルなのに石油危機が起きている」と批判。別の市民は「あるガソリンスタンドには2700台の車が入りましたが、燃料は200台分しかありませんでした」と指摘する。

 石油生産会社もニナワ州自体は石油が不足して石油危機に陥っているのではないことを認めている。

 では、なぜ市民は石油燃料を手に入れられないのか。

石油企業の金儲け

 実は、ニナワ州近隣のクルディスタン地域ではガソリン価格が2倍で売れるために、石油会社は燃料をこっそりクルディスタン地域に運び出している。一方、クルディスタン地域からは多数の市民が少しでも安い燃料を求めてニナワ州に来ている。燃料が足りなくなるのは当然だ。

 石油企業のあくどい金儲けこそ石油燃料不足の根本的原因なのだ。

 しかし、市民は黙ってはいない。石油生産会社の門前では「市民の石油は市民のためではなく泥棒のために使われている」と声を上げる。政府と癒着した企業の不当な利益獲得が燃料不足の原因であることを追及し、不当な事態に敢然と立ち向かっている。

 闘うイラク市民に連帯していきたい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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