2022年06月10日 1726号

【「大学も将来の仕事に向けた勉強も全部諦めた」/原告の20代女性が意見陳述/311子ども甲状腺がん裁判 第1回口頭弁論】

 福島原発事故に伴う放射線被ばくが原因で甲状腺がんになった10〜20代の男女6人が東京電力に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が5月26日、東京地裁であった。27席しかない傍聴券の抽選に226人が列を作った。

 原告4人が出廷し、20代女性の原告が約15分にわたって意見陳述。

 「大学に入った後、初めての定期健診で再発が見つかり、大学を辞めざるを得なかった。『治っていなかった。しかも肺にも転移している。悔しい』。この気持ちをどこにぶつけていいか分からなかった。

 手術跡は一生消えない。常に傷が隠れる服を選ぶようになった。

 病気になってから、将来の夢よりも治療を最優先してきた。治療で大学も、将来の仕事につなげようとしていた勉強も、楽しみにしていたコンサートも、全部諦めてしまった。

 本当は、大学を卒業して自分の得意な分野で働いてみたかった。「就活」してみたかった。それは叶わぬ夢になってしまった。

 大学を卒業し、就職し、安定した生活を送っている友達を羨望の眼差しで見てしまう。そういう感情が生まれてしまうのが辛い。

 体調もどんどん悪くなっている。もとの身体に戻りたい。どんなにそう願っても、もう戻ることはできない。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現するよう願う」

 弁論後の会見で、井戸謙一弁護団長は「裁判官も真剣な表情で、とくに左陪席は身を乗り出しながら聞いていた」と報告。大河陽子弁護士は、陳述を終えた原告の「伝えたいことは伝えることができた。自分の言葉で裁判官に直接目の前で話を聞いてもらえてよかった」との感想を紹介した。

 一方、井戸弁護士によると、東電側は事故直後の被ばく量測定結果やUNSCEAR(アンスケア)(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の見解を根拠に「原告らは被ばくしていない」と反論しているという。

 広報担当の北村賢二郎弁護士からは「原告へのバッシングが始まっている。何が真実か、突きとめる報道を」と要望が出された。

 次回口頭弁論は9月7日午後2時から。

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