2022年06月17日 1727号

【1727号主張 ZENKO中央要請と平和行動へ 市民の声で戦争と軍拡とめる】

 安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭に、サントリーホールディングスが酒類を無償提供していたことが明らかになった。政治資金規正法は政治家個人の後援会に対する寄付行為を禁じており、今回のケースは違法献金の可能性がある。

 安倍事務所の秘書は東京地検特捜部の調べに対し、次のように供述している。「会費の補填が公職選挙法で禁じられている選挙区内の有権者への寄付にあたるおそれがあるので、金額を抑えるために酒の持ち込みをした」と。つまり、サントリーから無償提供された酒類は公選法違反の実態をごまかす隠蔽工作に使われたということだ。

 安倍元首相は「ホテル側から明細書の発行はなかった」と強弁してきたが、もちろんこれは嘘である。ホテルの明細書は東京地検に提出されており、そこには酒の持ち込みを示す記載があった。安倍が明細書の存在を否定し続けたのは、違法献金の露見を恐れてのこととしか思えない。

サントリーが提供

 サントリーホールディングスの新浪剛史社長と言えば、安倍元首相お気に入りの経済人として知られている。産業競争力会議の民間議員としてアベノミクスを推進し、2014年9月からは経済財政の重要政策を審議する経済財政諮問会議の民間議員を務めている。昨年9月には「45歳定年制の導入」をぶち上げ、物議を醸した。

 安倍とは個人的にも親しいようで、ゴルフや会食、夫人同伴のコンサート鑑賞を行う関係だ。サントリーが新浪を迎え入れたのは「プロ経営者」の腕を見込んだからではなく、政界工作員の役割を期待したからだといわれている。

 時の首相が法に抵触することを承知の上で地元有権者への利益供与を行い、タダ酒を親しい企業に提供させていた。この事実を隠すために国会で虚偽答弁を重ねた―。どう見ても大スキャンダルではないか。

 ところが、検察はこの事実をつかんでおきながら、費用補填の問題では誰ひとり起訴しなかった。メディアの追及も極めて甘い。読売新聞、産経新聞は「酒類無償提供」の件を一切報じていない。ワイドショー番組も完全スルーだ。

 安倍が改憲問題や経済問題で持論を得意げに語ることができるのも、岸田内閣が高支持率を維持しているのも、検察とメディアの協力があればこそである。その恩恵を受けている自民党及び安倍一派には、今のロシアの独裁体制を批判する資格はない。

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