2022年06月17日 1727号

【物価高騰放置し財政私物化 買収目あての岸田補正予算 参院選で徹底批判を】

 予備費の“怪≠ェ出現した。「(国会に報告されたコロナ予備費12兆円余の)9割以上は具体的にどう使われたか追いきれない。国会審議を経ず、巨費をずさんに扱う実態が見えてきた」(4/23日経)からだ。

 岸田政権は、問題だらけのコロナ予備費を悪用して補正予算を組んだ。財政の私物化と財政民主主義否定の危険性が国会で追及されず、補正予算は成立した。

 予備費とは、不測の事態に対応するための費用であり、政府が使い道を閣議決定で決めることができる。予備費は国会の監視が及ばず、「政府の便利な財布」として乱用される危険性を持つ。補正予算は、政府自身の説明でも「予算作成後の事情の変更によって、その予算に不足を生じた場合、また予算の内容を変える必要が生じた場合に、出来上がった予算を変更する予算」(財務省)である。年度当初からの編成は異例だ。


予備費を予備費で補てん

 補正予算の内訳を見てみよう。予備費を予備費で補てんする内容になっている。総額2兆7009億円のうち、「今後の備え」として各予備費の1兆5200億円が計上されている。

 原油価格高騰対策1兆1739億円は石油元売り大企業への補助金が主だ。これは価格高騰に直撃される庶民や中小事業者を救済するものではない。「対症療法」の域を出ず、「世界的なインフレやエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)への対処も本質的な問題解決には遠い」(4/30日経)のだ。

 天然ガスや石炭の価格上昇により、7月から電気・ガス料金が値上げされる。前年より1〜3割も上がる。6、7月に食料品や飲料など約3千品目の値上げも予定されており、物価上昇がますます進んでいく。軍事費増強などの暴論を排し、大規模開発事業推進でなく、生活防衛策を拡充すべきだ。

 もう一つの問題は、補正予算の財源をすべて国債に求めていることにある。不公平税制を改め大企業や富裕層課税を強化するのでなく国債依存を高めることは、将来世代へのツケにもなり、財政規律をゆるめて財政民主主義を弱体化させる。

選挙対策が狙い

 補正予算の背後に参院選を前にした政治的思惑が見え隠れする。緊急経済対策の財源をめぐって予備費でまかなうとする自民党と大型補正予算を求める公明党が「対立」したが、予備費の積み増しを軸にした小規模の補正予算編成での「折衷案」となった。だから、「小規模編成、まるで『なんちゃって』補正、自公折衷決着 予備費積み増し、正当性に懸念」(4/22毎日)と揶揄(やゆ)されている。

 田中秀明明治大学教授は今回の補正予算をバナナのたたき売り≠ニ批判する。「7月に予定されている参院選を控え、世の中にアピールするためのものであり、公明党のステークホルダーが選挙での支援の見返りを求めたからではないか。そこに、矛盾の根源がある」(5/19毎日)

 岸田首相は、4月26日の記者会見で補正予算が選挙対策であることを明らかにしていた。岸田は「2段階のアプローチで万全の経済財政運営」と強調しつつ、参院選前の第1段階で補正予算による「速やかに実施に移し、皆様のお手元に各種支援策」を届け、選挙後の第2段階で「総合的な方策を具体化」すると言う。つまり、補正予算という市民への「買収策」で参院選の票集めを行い、市民に負担を強いるグローバル資本のための「本格的な施策」は選挙後に後回しする、といわば公言したのである。

 物価高騰への対抗は最低賃金や年金引き上げで所得を増やし、命とくらしのための根本的政策転換を迫らなければならない。なんちゃって補正≠ノだまされず、大企業・富裕層課税強化、消費税減税を求めよう。 
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS