2022年06月17日 1727号

【東電刑事裁判控訴審が結審/市民の要求聞かぬまま/世論広げ旧経営陣有罪判決を】

 東京電力旧経営陣に対する強制起訴刑事訴訟第3回控訴審が6月6日、東京高裁で行われた。

 前回、2月9日の第2回控訴審で「次回結審」が告げられていたものの、避難者賠償4裁判の最高裁判決が6月17日に決まるなどの情勢変化を受け、被害者代理人弁護士はこの間、次回結審としないよう求める上申書を東京高裁に提出。福島原発刑事訴訟支援団も5月20日、公正判決を求める署名1万2140筆を提出していた。

 法廷では、被害者2人が書面で提出した意見陳述が代読された。「細田啓介裁判長はなぜ現場検証をしないのか。自分の住んでいた地域が事故でどう変わったか直接見てもらえず悔しい」と裁判長を名指しで批判。もう1人は「避難バスに乗せられ、寒さの中で父は亡くなった。なぜ誰も責任を取らないのか」と3被告への有罪判決を求めた。

 検察官役の指定弁護士が、2009年に国が作成した地震動予測地図が地震本部の長期評価を新知見として採用していること等、追加提出した証拠資料を説明。「被告人らの刑事責任を否定することは正義に反する。原判決は破棄されるべきである」と締めくくった。

 続いて、3被告の弁護側が控訴棄却を求め弁論を行ったが、「民事訴訟の事実認定を刑事裁判に適用するのは不適当」「民事訴訟と刑事訴訟では求められる責任の質が異なる」など形式論がほとんどで本質的な議論を避けたい本音が見えた。

 細田裁判長は、1万筆を超える署名で示された市民の審理続行の意思を無視して結審を宣告。閉廷後の法廷では裁判所職員が制止する中「被害者の声を聞け」「現場検証をしろ」との怒号が飛び交った。

 判決は早ければ12月にも言い渡される。公正判決に向けた闘いが必要だ。

 
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