2022年06月24日 1728号

【読書室/日米同盟・最後のリスク なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか/布施祐仁著 創元社 1500円(税込1650円)/日本を戦場にしないために】

 日米安保条約が日本の平和と安全に役立っていると考えている人が77・5%(2018年内閣府調査)もいる。ところが、アメリカ政府の公文書には「在日米軍は日本を守るためのものではない」と書かれている。この落差―とりわけ日本側の意識を著者は「安保神話」と呼び、それはもはや通用しないと断じる。

 東アジアの「安全保障」をめぐる状況が大きく変化したとされ、日米軍事同盟が強化されつつある。他国への攻撃能力は持たないとしてきた日本が、今、中国に達する射程距離を持つミサイルの開発を始めている。また、米軍の新型中距離ミサイル配備が計画されている。日米が一体となって中国を照準に敵基地攻撃能力を強めているのだ。

 米軍の中距離ミサイルを2023年以降に日本へ配備する計画は、正式なものではない。マスコミ報道も少なく、注目されていない。正式に通告されると配備を止めることが困難となるため、著者は本書で警鐘を鳴らしている。

 もし、中国とアメリカが中距離ミサイルを撃ちあう事態になれば、中国のミサイルはアメリカ本土ではなく日本に向けられる。米中戦争の主戦場は日本など東アジアなのだ。

 現在、その最前線として沖縄・南西諸島へのミサイル配備が焦点となっているが、ことは南西諸島にとどまらない。日本全土が戦場になるのである。

 著者は、日米軍事同盟の歴史を確認し中距離ミサイル配備の問題点をあぶりだす。同時に、軍事同盟ではない、対話と協力、外交による「地域安全保障機構」という対案を示し、日本を再び戦場にさせないための提言を発している。(I)
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