2022年06月24日 1728号

【東リ偽装請負裁判 最高裁で画期的勝利 派遣労働者直接雇用の道を開く】

 6月7日、最高裁第3小法廷は、東リ偽装請負事件で東リ株式会社が訴えていた上告・上告受理申立てを棄却・不受理を決定した。 これによって昨年11月4日大阪高裁が言い渡した判決が確定した。L.I.A.労組の派遣労働者5人が東リ株式会社の従業員の地位にあることが確定したのだ。

 判決を受け、労働者と弁護団は、東リに対して直ちに団体交渉を申し入れ、復職する職場労働条件などを確定させた上で、東リ本社工場に職場復帰する予定だ。実現すれば、歴史的快挙である。

 この勝利の意義は、企業が偽装請負という違法派遣状態で労働者を働かせていた場合、その労働者に対して直接雇用の申し込みをしたとみなす労働者派遣法第40条の6「労働契約申込みみなし」制度を適用し直接雇用の道を拓いた初めての実例になることである。全国の非正規労働者の大きな展望になるだろう。

東リの上告を棄却・不受理

 今回の判決の意義はそれにとどまるものではない。

 現在、全国の製造現場はもとよりソフト開発などの職場でも、実際は労働者派遣であるにもかかわらず派遣法の制約を逃れるために、別会社の請負会社の社員であるとの体裁をとる違法な偽装請負の働き方が蔓延(まんえん)している。

 本来なら裁判になるまでもなく、偽装請負状態を労働局など行政に申告すれば、行政として偽装請負の認定をし行政指導しなければならない。過去には多数の認定がなされた。しかし、安倍政権以降は労働行政が大きく変質し、偽装請負の認定をしなくなっているのが現実である。

 判決はそのような労働行政に対する厳しい批判になっている。判決は、適法な派遣と請負の区別に関する基準「37号告示」をきちんと適用して、東リの現場での働き方が偽装請負であると認定したのである。

 判決が確定した以上、行政は再び偽装請負を認定し、指導することを迫られる。かりに、派遣先企業への直接雇用まで至らない場合でも、2020年4月の改正労働者派遣法すなわち、派遣労働者と派遣先労働者の同一労働同一賃金原則が適用され、労働者の労働条件は請負の場合よりも大幅に向上することになるであろう。

 今回の勝利は、全国の非正規労働者の労働条件や身分の向上に大きな影響を与えるものである。勝利の意義を全国に広めよう。

(L.I.A 労組を勝たせる会・井手窪啓一)

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