2022年07月01日 1729号

【2022参院選/大阪カジノ住民投票署名成功に学び/岸田の軍拡・改憲ストップ、市民生活守ろう/MDS集会基調要旨】

 MDS(民主主義的社会主義運動)は6月18、19日、各地で集会を開き、参院選(7月10日投開票)をどう闘うべきかを明らかにした。基調報告の要旨を掲載する(まとめは編集部)。

岸田内閣は何をしようとしているのか

 岸田政権の狙いは軍拡と改憲だ。ウクライナへのロシア侵攻をアジアに置き換え、「中国の台湾侵攻」を想定しアジアにおける軍事同盟を強化しようとしている。また「憲法改正の取り組みを我々の手で進めなければならない」(5/20東京)と強調している。

 日本維新の会馬場伸幸共同代表は「ほとんどの国民が日本にもウクライナのようなことが起こる危機意識を持っている」と語る(5/2共同)。これまで9条改憲に賛成しなかった公明党も憲法に自衛隊明記を検討するとした。自公維新の課題意識は共通である。

 その中で岸田はアジア全域を対象とする軍事同盟強化を進めている。

 日米首脳会談(5/23)の共同声明で岸田は「日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意」を表明、バイデン大統領は「強く支持」した。骨太方針(6/7)には「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、日米同盟を基軸としつつ、豪印、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州、太平洋島しょ国などとの協力を深化させる」としてアジア版NATO(北大西洋条約機構)の方向を示した。

 アジア版NATOへの岸田政権の動きは活発である。アジア安全保障会議(6/4)で岸田は「海洋秩序の実現に貢献するため、部隊を派遣する」と発言(6/14日経)。海上自衛隊の護衛艦、潜水艦などが6月13日から10月28日までインド太平洋地域を回る(図1)。6月末からのリムパック(環太平洋合同演習)には日米豪印、韓国、フィリピン、マレーシアが参加する。元自衛艦隊司令官香田洋二は「自衛隊が国の外交政策を軍事面で担う大きな役割がある」(6/14日経)と述べた。アジア全域に自衛隊が実力を見せつけるのである。



 しかし、軍事費を2倍化(5兆円上積み)することは社会保障、医療などを大きく削減するということだ。

 既に骨太方針は「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、能力に応じて皆が支えあうことを基本とする」と社会保障費の削減と負担増を要求する。政府の財政制度等審議会では、介護保険について要介護1、2を介護保険給付から外し、利用者2割、3割負担対象者の拡大、ケアプラン有料化、職員配置基準の緩和などを提起している。年金は今年度0・4%削減される。10月から高齢者の医療費窓口負担も増える。市民生活の悪化は必至だ。


内閣支持率はなぜ上昇したのか

 だが岸田内閣の支持率は上昇している。朝日新聞の世論調査(5/21、22)によれば支持率59%。その一方、「参院選をきっかけに日本の政治が大きく変わってほしい」が52%で、「それほどでもない」を上回った(図2)。市民は現状の変革を望み、岸田政権を積極的に支持しているわけではない。経済政策に「期待できる」は34%、「期待できない」が56%。物価高への対応を「評価する」は23%、「評価しない」が68%と圧倒的に岸田政権の物価高対策は否定された。



 それにもかかわらず、内閣支持率が上昇しているのは、野党共闘が解体されているからである。

 参院選直前にもかかわらず一人区での共闘が大幅に減少している。2016年、19年参院選では32ある一人区すべてで候補者一本化が実現したが、今回は12選挙区のみである。

 立憲民主党と国民民主党の最大の支援団体・連合(日本労働組合総連合会)が公表した昨年10月の衆院選総括は「立憲と共産党が進めた野党共闘について『基本政策や方向が大きく異なる政党同士が連携・協力することは、多くの有権者の理解を得ることは難しい』と見直しを求めた」(12/16朝日)。連合は国民民主を野党から切り離し、立憲を共産との共闘から外させた。国民民主は22年度予算案も補正予算案にも賛成。内閣不信任案(6/9)には維新ともに反対。「自民幹部は『立憲民主と仲たがいさせることができた』とほくそ笑み、自民ベテランは『野党分断を際立たせられるので、不信任案を出してくれた方がありがたかった』とまで語った」(6/10毎日)。

 連合は野党分断だけでなく自ら自民に接近した。芳野友子会長は自民党「人生100年時代戦略本部」会合で「私たちの政策実現のため、ぜひ自民にも力を貸してほしい」(4/19毎日)と発言した。

 このような状況に「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」は政策要望書を出し、一人区での最大限の協力を野党に求めた(5/9)。だが、立憲民主党と共産党の会談結果は「勝利する可能性の高い選挙区」を優先。これまで実現してきた候補者一本化はできなかった。

勝利の展望はどこにあるのか

 9条改憲は阻止できる。 朝日の世論調査(5/3)では「改憲必要」は56%で「必要がない」37%を上回ったが、9条は「変えない方がいい」59%が「変える方がいい」33%を上回った。

 この時、日本共産党は過ちを犯した。志位委員長は4月7日、「急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用」「憲法9条の下でも個別的自衛権は存在し、その権利を行使することは当然である」と自衛隊活用論を打ち出した。政権に加われば「(自衛隊)合憲の立場をとる」(5/28朝日)とまで述べた。

 市民は岸田の経済政策を信用していない。最新の調査(6/14共同)では、岸田の物価高対策を「評価せず」が64%となり、内閣支持率も56・9%と5月調査に比べて4・6ポイント下落した。岸田は資産所得を増やすといい、市民の金を株式市場に投資させようとしている。ロシア経済制裁の結果である石油、天然ガス価格上昇に、原発再稼働で対応しようとしている。

 岸田政権を放置しては市民生活は破壊され、アジアにおける軍事緊張が増すばかりだ。闘いを強めるならば正当性のない岸田内閣の政策は変えることができる(表および8面記事参照)。

 MDSは大阪カジノ住民投票直接請求運動を全力で闘った。直接請求署名法定数突破の意義は限りなく大きい。維新が改憲を掲げ全国展開しようとしているとき、最大拠点大阪で維新をストップさせる運動が成功したからだ。強力な維新支配の中でやっても成功するかわからない≠ニいったあきらめ感を粘り強い闘いの組織化で克服した。維新支配は崩せるとの実感を多くの市民が持った。全国の市民に展望をあたえるものだ。

 沖縄県民の闘いに連帯し、辺野古新基地建設阻止、南西諸島への自衛隊配備強化反対の闘いを強めなければならない。MDSはDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)と連帯して米国議会に働きかけるZHAP(全交辺野古新基地建設反対プロジェクト)を、東アジアの平和構築のために朝鮮戦争終戦平和キャンペーンをともに進めている。

 参院選で平和、護憲、社会保障、医療、教育拡充を目指す勢力の勝利を勝ち取ろう。MDSは、全国比例区では福島みずほ予定候補、選挙区では統一候補、統一候補でないところは共産党候補を支持し闘う。
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