2022年07月01日 1729号

【みるよむ(626) 2022年6月11日配信 イラク平和テレビ局in Japan イスラム主義政党が攻撃する 市民のエンターテインメント】

 イラクでも、欧米や日本同様音楽や演劇などのエンターテインメントが行われている。ところが、イスラム主義勢力がこれに攻撃を加えている。2022年4月、サナテレビはその実態を取材し報告した。

 番組の最初、ある宗教家が川の上の遊覧ヨットに向かって大声をあげている。「シーア派の指導者が暗殺された日に、祝い、歌い、ビールを飲むということは考えられるか?」と叫び、人びとに「良心や人間性があるのか。退廃と卑しさを持つ人間になってしまった」と悪罵を投げつける。

 千何百年も前のシーア派指導者の命日と遊覧ヨットでビールを飲むことに何の関係があるのか。不可解かつ滑稽でさえあるだろう。しかし、現在のイラクでは娯楽や慣行にもこうした支配と攻撃が続いている。

 サナテレビは2021年末のバビロン・フェスティバルでのコンサートへの攻撃を伝える。バビロンは9世紀のシーア派イマーム(宗教指導者)らの聖地だとして「手をたたいたり、踊ったり、歌ったり、人生を愛する」行為を中止させようとした。同州知事は歌詞の一部を禁止する公式の通達まで出した。

他人への敵意をあおる

 また、エジプト歌手のコンサートに「人種差別的な記述」で攻撃が行われた。政府は犯人を逮捕するどころか、攻撃グループの襲撃を容認した。さらには、シーア派のムクタダ・アル・サドルが指導者であり暴力支配の一翼を担う民衆動員部隊が「他人への敵意を描いた演劇」を運営、上演した。文化の面でも暴力的支配を強めているのだ。

 人びとのエンターテインメントにまで攻撃を加えるのは、宗教支配によって貧富の格差や社会サービスの欠如への不満や怒りを抑え込む狙いがある。サナテレビは文化や表現活動の抑圧と支配に反対の声を上げようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

 
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