2022年07月01日 1729号

【原発損害賠償訴訟上告審 国の責任否定した最高裁不当判決 国策追随に「恥を知れ」】

 福島からの原発事故避難者などが国・東京電力を相手取り、損害賠償や原状回復を求めた民事訴訟の上告審で、6月17日、最高裁第2小法廷は国の責任を否定する不当判決を出した。

 原発事故避難者のうち千葉・群馬・愛媛の原告が損害賠償を求めた3訴訟に加え、福島県内の被害者を中心に賠償や原状回復を求めた「生業(なりわい)を返せ!地域を返せ!福島原発訴訟」(生業訴訟)の4訴訟で、最高裁は今年2〜3月、相次いで東電の賠償責任(14億円)を認める決定を出す一方、国の責任についての統一判断を改めて示すとしていた。

 この日の判決は、1〜2審で争点となった地震調査研究推進本部による長期評価(2002年公表)の信頼性や予見可能性については判断せず、長期評価に基づく対策を講じても事故は不可避だったとして、東電に対する規制権限を行使しなかった国の責任を否定する不当な判断を示した。結論ありきの国策追随判決だ。

 全国から最高裁前に詰めかけた原告・支援者に、生業訴訟の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士から判決内容が伝えられると「ふざけるな」「恥を知れ」と激しい怒りの声が上がった。馬奈木弁護士は「判決は被害にまったく向き合っておらず、受け入れられない」と糾弾した。

責任認めた反対意見

 判決後の報告集会では、群馬訴訟原告の丹治(たんじ)杉江さんが「判決は悔しい。被害がブルドーザーによって押しつぶされた。このまま誰も責任を取らなくてよいわけがない。みんなで社会を変える力にしていこう」と新たな決意を表明。「私の裁判は終わったが、これからは他の裁判を支援する」(千葉訴訟原告・瀬尾誠さん)「第2弾の裁判がある。黙らない原告がいることが大事だ」(生業訴訟弁護団・南雲芳夫さん)「事故当時幼かった次女が中学2年になり『この事故は国の責任で起きた』と教科書に書いてほしいと言っている。これからも頑張りたい」(愛媛訴訟原告・渡部寛志さん)と続いた。

 判決は菅野博之裁判長ら4裁判官中3人の多数意見だが、到底歴史の検証に耐えうるものではない。三浦守裁判官は価値ある反対意見を述べた。判決文の半分以上に及ぶ反対意見は、長期評価の信頼性や予見可能性判断から逃げた多数意見を厳しく批判。長期評価は信頼でき、予見可能性、結果回避可能性いずれも認められるとして国の責任を明確に認めた。この反対意見を後続訴訟の逆転に生かす取り組みも重要だ。

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