2022年07月15日 1731号
【他に行き場はない 声上げ闘う原発避難者 追い出し裁判 居住権裁判 7月25・26日 連続して口頭弁論】
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福島原発事故による避難者の住宅問題を巡って、現在、二つの裁判が争われている。一つは、昨年3月に福島県が提訴した追い出し裁判。福島地裁で2人の被告(避難者)と争い、7月26日に第8回口頭弁論を迎える。もう一つは、今年3月11日、11世帯が福島県を訴えた居住権裁判。7月25日に東京地裁で第1回口頭弁論が開かれる。
いずれも、東京と埼玉の国家公務員宿舎に住む区域外避難者が、2017年3月をもって一方的に住宅提供を打ち切られ経済的・精神的理由で行き場を失ったことに対し、救済すべき行政があろうことか「不法占拠者」として強制退去を迫っているケースだ。原発過酷事故を想定していない災害救助法では原発避難者は救われず、国際人権法・社会権規約11条、国内難民に関する指導原則で居住権を守る義務があると訴えている。
明け渡し必要なしと提訴
3月に精神的苦痛に対する慰謝料請求を行った居住権裁判原告への報復として、福島県は、6月県議会に明け渡しと2倍家賃請求を含む損害賠償金を求める裁判を起こす議案を提出した。
県は提出理由を「(11世帯が)訴えを起こしたため、話し合いによる解決が困難であると判断した」と議員に説明している。真っ赤なうそだ。過去3度、一方的に退去期限を示し「裁判も辞さない」と脅す通知文を出し、福島県の実家を勝手に調べ上げて訪問し退去させるよう親族に恫喝(どうかつ)を加えてきた。また、「何度も相談会をもち引っ越しの物件を紹介してきたがかたくなに拒否している」と避難者のわがままのように描く。「話し合い」の実態は、まだ出ないのか、いつ退去するのかを迫るものであり、インターネットで調べた程度の手の届かない高い物件の紹介しかしてこなかった。
県のうそと横暴に対抗して、原告は6月29日、住居の明け渡しや損害賠償金支払いの義務がないことの確認を求める訴えを東京地裁に新たに起こした。記者会見で柳原敏夫弁護士は「そもそも2017年の区域外避難者への住宅無償提供打ち切りは、原発事故で国内避難民となった者への継続的な居住の保障、代替措置など許容される強制退去の要件すら満たしていない違法な行為だ」と述べた。
生活のすべ 奪われた
原告は訴える。40代の男性は「仕事は派遣労働のため3年間しか同じところで働けず、不安定なままだ。そんな状況でここを出た後(高い家賃を払いながら)暮らしを続けるお金を貯めるのは困難。福島県からは、これまでの使用料の2倍額を請求され、県の職員が福島の実家に行き恫喝に近いきつい言い方で親族に退去を迫った」と批判。
50代の男性は「17年4月から有償に変わったが、ほかに行き場はなく、県から脅されるような形で有償契約した。東電の事故で避難したのにどうして家賃を支払って避難しなければならないのか納得いかない。派遣で働いていたので手取りは月約15万しかなく、そのなかから約3万円の家賃は大きな負担。その上、2倍請求となれば、福島に戻れと強制されているようなもの。東京で生活するすべを奪われていると思った。紹介される物件は7、8万円のものしかなかったので、明らかに県の悪意としか思えない。提訴して闘っていく」と、決意を述べた。
立ち上がった避難当事者を支え、個人責任ではなく原発事故の責任をとらせ、原発被害者の居住権を根付かせていくために重要な闘いだ。フクシマを過去の出来事とし再稼働を推進する政府にとって、住宅闘争はアキレス腱となる。
◆7月15日(金)午後2時 居住権裁判スタートに向けた決起集会 衆議院第1議員会館
◆7月17日(日) 追い出し裁判に向け郡山市・福島市で宣伝・交流会
◆7月24日(日)午前10時 ZENKOin大阪反原発分科会で住宅闘争報告(エル・おおさか/東京会場−池上会館)
◆7月25日(月)午後1時30分 居住権裁判第1回弁論 東京地裁103号法廷
◆7月26日(火)午後1時30分 追い出し裁判第8回弁論 福島地裁
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