2022年08月12・19日 1735号
【統一教会と自民党 癒着の構造/安倍の一存で組織票を分配/利用するためカルトを野放し】
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安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件をきっかけに、自民党と旧統一教会の関係が注目を集めている。なかでも安倍派との結びつきが歴史的に強く、安倍元首相は統一教会の政界工作のパイプ役となってきた。反社会的カルト教団をのさばらす原因を作った張本人を「国葬」にしていいわけない。
相次ぐ関係発覚
ツイッターのトレンドに「#自民党って統一教会だったんだな」が入るほど、自民党国会議員と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の癒着が次々に明らかになっている。
現職閣僚では、宗教法人を所管する末松信介文部科学相、警察庁を管理する二之湯智国家公安委員長、安倍元首相の実弟である岸信夫防衛相が教団やダミー組織との関係を認めた。岸防衛相は、霊感商法や高額献金などの社会問題を起こしている団体だと「認識していた」と開き直った。
統一教会がここまで自民党に食い込んだのには理由がある。教団の教えをまとめた『原理講論』には、「第三次大戦に勝利して共産主義を壊滅させ、…理想世界を実現しなければならない」とある。こうした「勝共」思想を実行するために、右派政党・政治家に取り入ったのだ。
自民党の側も統一教会の政治組織「国際勝共連合」の設立に岸信介元首相(安倍元首相の祖父)が協力するなど、利用価値のある教団を庇護した。勝共連合は秘書などのスタッフを自民党の政治家に派遣。選挙になると運動員を数十人単位で送り込んだ。
政界工作のもう一つの目的は、霊感商法をはじめとする資金稼ぎを容易にするためである。大物政治家の「お墨付き」を得ればターゲットをだましやすいし、何より政治力による摘発逃れ効果を期待した。
転機となった事件がある。2009年11月、統一教会系の印鑑販売会社「新世」の社長らが特定商取引法違反の罪で懲役2年の有罪判決を受けた。判決は「相当高度な組織性が認められる継続的犯行」と断じ、霊感商法と統一教会の関係を初めて認定した。
この一件を教団側は「政治家とのつながりが弱かったから警察の摘発を受けた」と総括。第2次安倍政権の成立を追い風に、自民党への食い込みを再び強化していった。
名称変更に安倍側近
教団が特にこだわったのが名称変更だ。すっかり悪名が高くなった統一教会の名を捨てて、新たな看板の下で布教や霊感商法への勧誘を進めようとしたのである。しかし、名称変更は担当官庁の文化庁になかなか認められなかった。
1997年に変更申請を拒んだ前川喜平・元文科省事務次官(当時、文化庁宗務課長)はこう説明する。「安易な名称変更を認めれば、新たな被害者を生み出す懸念もあります。宗教団体の実態が変わっていない以上、認証するわけにはいきませんでした」(「週刊文春」7月28日号)
以来、文化庁は20年近く名称変更の申請を受理しなかった。それを一転して認めたのは2015年8月のことだ。当時の文部科学大臣は安倍側近として知られる下村博文である。下村は「名称変更は部長の判断」と自身の関与を否定しているが、教団関連団体の幹部から陳情を受けていたことが明らかになっている。金銭の授受(下村の後援組織への献金やパーティー券の購入)もあった。
安倍政権の下、政治の圧力で行政が歪められた可能性は極めて高い。森友・加計事件と同じである。
安倍が動かしていた
韓国発祥のカルト教団と自民党(特に安倍派)の蜜月ぶりが明るみにでたことに、ネトウヨなどコア支持層は大いに動揺している。安倍応援団の右派文化人はアクロバティックな弁護に懸命だ。たとえば、作家の門田隆将は「安倍氏は統一教会の“天敵”だった」などと言い出し始めた。
統一教会の「天敵」がなぜ、ダミー組織の集会にビデオメッセージを送り、現教祖を讃えるのか。論理的に成り立たない主張である。そもそも安倍晋三と教団の関係は、広告塔に利用されたといった受動的なものではない。選挙の際に統一教会の組織票を差配していたのは安倍本人だった。
自民党のあるベテラン秘書はこう明かす。「選挙で誰が統一教会の支援を受けるかは、安倍さんの一存で決まるといわれていました」「落選しそうな意中の候補がいれば、安倍さんから“彼を頼む”といった具合です」(「週刊新潮」8月4日号)
「国葬」絶対ダメ
実名で証言する元自民党議員も現れた。伊達忠一前参議院議長である。北海道テレビ放送(HTB)の取材に対し、2016年の参院選で自身が推した候補者(全国比例)に、当時の安倍首相から統一教会の組織票を回してもらったことを認めたのだ。教団やダミー組織のイベントに数回出席したのは、当選の見返りだったと話す。
実は、先の参院選でも同じ人物に統一教会票を割り振ることを依頼したが、安倍から「今回は井上で行く」と断られたという。第1次安倍政権で首相秘書官を務めた井上義行参院議員のことである(教団の集会で「信者になった」と紹介されたことで有名。自身は賛同会員だと主張)。
統一教会を手駒に使う手口は祖父の代からのお家芸らしく、父・晋太郎も自民党幹事長時代に教団の選挙ボランティアの割り振りを行っていた(7/27放送『news zero』)。安倍・岸家にとっては自由に動かせる「私兵」という感覚だったのだろう。
多くの人びとを欺き、不幸に突き落としてきた反社会的団体と持ちつ持たれつの関係にあった自民党。その中心人物を「国葬」にするなんて馬鹿げている。絶対に認められない。(M)
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