2022年09月02日 1737号
【命を脅かす異常な物価高/無策の岸田政権と日銀/最優先は消費税減税だ】
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異常な物価高が市民を直撃している。高齢困窮世帯がエアコン電気代を抑えて熱中症になるなど、命にかかわる事態すら起きている。
いま格安プランの携帯電話契約が急増し、ここ1年で約2・6倍に上る。人びとの物価高防衛策の一つだが、こうしたささやかな努力も商品値上げの急増で帳消しとなる。物価高は、もはや個人の努力で乗り切れる段階にはない。
物価高対策を求める声が高まっている。だが、岸田政権は、市民生活に届くことのない中途半端な「対策」のみ。最たるものが節電プログラム参加への2000円相当ポイント付与だ。約700社の電力小売り会社のうち節電プログラムへの参加は40社程度しかなく、その節電プログラムを利用する家庭もごく少数だ。
コロナ禍に加え物価高倒産が増えている。収入を大幅に減らす人も増え、貧困の拡大が止まらない。実効性ある物価高対策をただちに打ち出すべきだ。
物価高への認識欠如
日本銀行の黒田総裁は7月21日、「金融緩和を継続する」とした。金融緩和すれば低金利で資金調達ができ、企業の運転資金や設備投資、個人の住宅購入が進むため経済活動が活発になると言う。日本銀行ホームページQ&Aは「それが景気を上向かせる方向に作用します。これに伴って、物価に押し上げ圧力が働きます」と平然と記している。
2013年から「量的・質的金融緩和」が行われてきたが、日銀の言ったようには物価も賃金も一向に上がらなかった。9年経っても効果がない政策は見直すべきとの意見が強まっている。だが、日銀はこの意見を受け入れない。
最近になって物価が上がってきた。これを日銀はどう捉えているのか。7月に発表した報告書「経済・物価情勢の展望」によれば、生鮮食料品を除く消費者物価指数について22年度2・3%、23年度1・4%、24年度1・3%と予想している。物価高は一過性のもので来年4月以降に収まるのだから金融緩和を止める必要はない、とする。日銀は物価高を「放置」することを宣言したのだ。
物価高の原因を問われた岸田首相は「ロシアによるウクライナ侵攻がもたらした世界的なエネルギー価格や食料価格等の上昇による」(7/2日経)と回答した。ウクライナ問題が主因と言うのなら、まずその平和的解決に奮闘すべきなのに何もしようとしていない。ウクライナ問題以前から原油や天然ガスなど資源は高騰しており、岸田首相はこの事実を無視している。
世界は減税と生活保障
各国の物価高対策を見てみよう。原油価格の高騰に対し、エネルギー税の引き下げ(ドイツ、3か月間)、電気料金の上昇抑制(フランス、来年1月まで)、燃料税減税(英国、来年3月まで)などがある。生活困窮者支援では、暖房費補助(ドイツ)、インフレ手当の支給(フランス)、固定資産税の引き下げ(英国)などだ。これらと比較するだけでも、節電ポイント策が全くピント外れで、岸田政権が対策らしい対策を打ち出していないこと=物価高無策は明らかとなる。
一方、市民の困窮実態に対し、長野県松本市で「生活困窮者世帯に1世帯当たり電気料金の上昇分として1万円を支給」するなど、各自治体は独自で取り組みを進めている。地方創生臨時交付金の「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」を活用したものだ。生活者支援では、給付金などについて法律の規定・基準以上の「上乗せ・横出し」、給食費支援、公共料金の減免、福祉・就労支援の事業が行われている。零細企業などに対して事業継続支援等の支援がある。
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輸入品の値上げをもたらす円安が続き、秋以降には値上げラッシュも見込まれる。ウクライナ戦争の経済制裁で加速する資源・エネルギー価格高騰の中、物価高は一過性のものではない。
緊急に必要なのは全国レベルでの総合的な対策だ。その重要な柱とするべきは消費税減税である。この声を大きくしていこう。 |
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